CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
3月1日のソナの誕生日、お腹は32週目に入り、安定期に入っている。
あんなに酷かったつわりは、正月休みが終わる頃には無くなり、俺も安心して仕事に専念出来た。
予定日は、5月5日のこどもの日である。
後2ヶ月程で、我が子に会えると言う気持ちが、待ち遠しくて1日1日が長く感じてしまうほどだ。
五体満足で産まれてくるのかが心配で、結局力を使ってソナに気付かれない様に、寝ているときにソッとお腹の上に手をかざしてスキャンしてみた。
すると、赤ちゃんは全て正常で、立派な男の子だった。
予定より少し早い5月1日の朝10時過ぎに産まれてくるのかが見えた。
陣痛が5月1日の朝7時過ぎに始まって、3時間後かぁ……。
思ったよりも安産で安心した。
でも、それはソナには内緒にしないといけないんだよなぁ…!
車にのってソナと病院の定期健診の帰り、ソナの実家に向かっている。
彼女の実家の母親が、韓国から戻って来ていて、誕生会をすると言うのだ。
『アッパ(パパ)、ただいま!』
「ソナや、お帰り!
チャンス君も良く来てくれたね。
さぁ、中に入って!」
『お兄ちゃんは?』
「もうすぐ来るよ。
美嘉(ミカ)におめかしでもさせてるんだろうよ。」
元XYZのベーシストで兄の泰俊(テジュン)は、実家の同じ敷地内に、4LDKの一戸建てを建てて、妻の美里(ミリ)ちゃんと1才7ヶ月半になる娘の美嘉(ミカ)ちゃんとの3人暮らしをしているのだ。
『チャンス、久しぶり!
また背が伸びたんじゃないのか?
ソナもお帰り!
お腹大きくなったな!』
「テジュン、元気そうだな。
身長!? 今は188cmになっちゃったよ。」
『お兄ちゃん、久しぶり!
美里オンニ(ミリお姉ちゃん)は!?』
「美嘉(ミカ)が、スカートを履かそうとしたら嫌!って逃げて、パンツはく!って言ってきかないのを、一生懸命に説得してるよ。
最近は、男の子っぽい格好ばっかりするから、どうにか女の子っぽい格好させようと必死だよ。」
『2才にもなってないのに、もう既に自我って出てくるんだ。』
「ソナ、俺達の子供にはどんな格好さそうかなぁ。」
『やっぱり、女の子だったら、出来るだけフリフリの可愛いのが良いなぁ~♪』
「男の子だったら?」
『チャンスオッパみたいに、かっこ良くレザー系とか、普段ならジーンズの似合う格好させたいなぁ。』
「あら、ソナお帰り!
チャンス君もいらっしゃい!」
『オンマ(ママ)、ただいま!』
「御無沙汰しております、オムニム(お義母さん)。」
『オンマ(ママ)、何作ってたの?』
「ミオック(ワカメスープ)よ。
私の特製ニンニク、唐辛子、赤貝入りのやつよ。」
『私の好きなやつだぁ~♪』
「私も去年、オムニム(お義母さん)のミオックを頂きましたが、本当に美味しかったです。」
と、義理の母と会話をしていると、
ピンポ~ン!
誰かが遣ってきた。