CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
2.Tried
俺は今、仁川空港にいる。
アボジ(親父)から、韓国のガールズバンドをプロデュースしてみろと言われたのが、約1ヶ月前。
明日の7月5日に彼女達が新星MUSICと本契約するのだ。
だから、それに合わせて、韓国に来るように言われている。
空港ターミナルを通り、空港の外に出たら、そこには智盛ヒョンニム(ジソン兄さん)が待っていた。
ジソンヒョンニムは、俺の従兄だ。
親同士が姉弟なんだ。
去年、大学を卒業して新星MUSICに入社したのだ。
ゆくゆくは、韓国本社の副社長の椅子に座って貰おうと思っているんだ。
まぁ、今はペイペイだけどね!
「ジソンヒョンニム、オレガンマ 二ムニダ。
(ジソン兄さん、ご無沙汰しています。)」
『ヒョンニム(兄さん)って言うの止めろよ。
ヒョン(アニキ)で良いから。』
「つい癖で。
ヒョン、どうしてヒョンが迎えに?」
『これが下っぱの仕事。
身内とかは関係無く、ビシビシ鍛えて貰ってるよ。
いつかは重役の椅子に座る事になると思うけど、今は現場がメチャクチャ楽しいよ!
覚えなきゃいけない事も沢山有るし、人脈も築かなきゃ。
まぁ、チャンスが社長に就任した時には、俺がサポートするつもりだから、これからも宜しくな!』
「なんか、ヒョンにそう言われると、何か照れちゃうよ!」
『とにかく、社長がお待ちだから、急いで行こうぜ!
これが、俺専用に会社が用意してくれてる車。
現代(ヒュンダイ)の最新セダンだぜ!
新入社員に、こんな高価な車を渡して、大丈夫なのか!?
まぁ、社長も気に掛けてくれてるんだろうけど、他の新入社員の目が痛いぜ!』
「気にしなくて良いんじや無いですか!?
アボジにも、思惑があってそうしてると思いますよ。
ところで最近、本社の芸能部門はどうですか!?
一度に女性歌手グループを、何組も同時にデビューさせていたけど、上手くいってますか!?」
『とにかく大変だったよ!
統括マネージャーや現場マネージャーは、タレント以上に忙しくて、寝る間が無いんだから。
途中で、倒れてしまう新人マネージャーも居たくらいだよ。』
「そりゃ大変だったんですね。」
『だから、今年入って来た新入社員の何人かは、辞めてしまったよ!』
「軟弱ですね。」