CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
1.Trial and Best
8月7日(土曜日)
今日は、竹中早紀のPV撮影の日だ。
何故、この日をPV撮影にしたかと言うと、時代劇で有名な井下泰二さんがその日、同じく映画村で撮影が有ると言う情報が入ってきたからだ。
うまく井下監督の目に止まれば、いずれ声がかかるだろう。
巧く目論見が当たれば、老舗の時代劇でデビューが出来る。
力を使えば簡単にいくだろうが、それでは彼女の為にならないんだよなぁ……。
この世界で活きていくには、少しのチャンスをものに出来なくては駄目なんだ。
今日は、テジュンの友人で、アイドルオタクの江藤亮太君も見学する為に同行している。
俺の車の助手席に座り、後部座席に座る竹中早紀をチラチラ見て、テンション上がりまくりだよ。
「亮太君、今日はヨロシク!」
『うん!
誘ってくれて有り難うです。』
「いつも、テジュンが助けて貰ってるって聞いたから、お礼だよ。
まぁ、楽しんでいって!」
『ォ…オウ!
ヨロシクデゴザ…ル…宜しくお願いです。』
「何、緊張してるんだよ!?
もっとリラックスして!」
『…あぁ。』
何か、えらい緊張しているなぁ。
話に聞いていただけだから、どんなのが来るかと思っていたが、見た目は普通の大学生だよなぁ。
小太りで、ボンタンスリムのジーパンにチェック柄のシャツをタックインさせて、リュックを背負った秋葉系をイメージしていたんだけど、男前の好青年だから逆に驚いた。
~♪~♪~♪~♪~
「着いたよ。
ここが今日撮影する現場の映画村。
撮影クルーは、先に来てセッティングしているはずだから。」
『常務、それでは早紀を連れて衣装とメイクの準備してきます。』
「浅田マネージャー、それでは早めにお願いしますね!」
『チャンスさん、それじゃあ後で!』
「OK!
気合い入れていけよ。
うちの一押し俳優の、山崎幸次郎さんが相手してくれるから、しっかり学んでおいで。
台本は頭に入っているかい!?」
『ハイ。
バッチリ覚えて来ました。』
と言うと、軽く会釈してから浅田マネージャーと共に、映画村の中に用意してある控室に入って行った。
俺は、江藤亮太と一緒に撮影現場の方に向かった。
途中で、運良く井下監督に会い、挨拶を交わした。