CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
「監督、ご無沙汰してます。
暑い中、ご苦労様です。
いつも、京都で撮影しているのに、こちらまで撮影に来られるなんて珍しいですねぇ。」
『おぅ!
誰かと思えば、高山社長んところの坊っちゃんじゃないか!
今回は、スポンサーの要望で仕方なくこっちで撮影だよ。
でもまぁ、暫く見ない内に、ずいぶん大きくなったなぁ。』
「ハイ。
最後にお会いしたときは、まだ中学1年生でした。
あれから7年経ちましたから。」
『高山社長は、元気でやっているかい?』
「相変わらず、日本と韓国を行ったり来たりしています。」
『今日は、ここでお仕事かい?』
「えぇ。今度、うちで女優として売り出す竹中早紀って言う子のPV撮影なんです。
運動神経抜群で、馬にも乗れるって言うので、時代劇っぽくドラマ仕立てのPVを作ってみようかって言う話になったもんで。」
『ちゃっかり、その子の売り込みかい?』
「いえいえ、そんなぁ!
彼女は、身長が168cm程有りますので、なかなか時代劇には難しいと思っていますから。」
『元々何をしていた子なんだい?』
「うちに移籍させるまでは、グラビアアイドルをやっていたんです。
元々が女優志望の子でしたから、再スタートするんだったら、路線も変更してみようかって事になりました。」
『今日は、どの辺で撮影しているんだい?』
「下町の外れにある剣術道場のセットを借りて行います。
だから、厩舎からスタートして、馬で道場迄やって来て、そこで剣術道場の師範と勝負する設定なんです。」
『そこまでは聞いていないよ。
坊っちゃんは、どうしてもその子を私に会わしたいらしいなぁ。』
「とんでもありませんよ。
大監督にお見せ出来るほどの大物では有りませんですから。」
『まぁ、うちらが撮影している、すぐ裏手だから、時間が有れば顔を出すよ。
新星芸能の高山社長には、色々お世話になったからね!』
「そうですか。
それでは、後ほど。
失礼します。」
『あぁ。
頑張ってな。』
「亮太君お待たせ。
つい長話しちゃったよ。」
『高山君って、タレントの売り込み上手ですねぇ。
あの人って、
《歌人 細川幽斎》
って連続時代劇のドラマで有名な井下監督だよな!?
知り合いなのか?』