CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
「まぁな。
井下監督のドラマには、うちのタレントがかなり出演していたんだ。
それで、夏休みとか春休みは、良く京都の撮影所まで遊びに行ってたんだ。
その時、俺の親父が紹介してくれたんだ。
凄い優しい人で、色んな事を教えてくれたよ。」
『竹中早紀ちゃんも、あの監督の作るドラマに出られたら良いなぁ!』
「そうさせてみせるさ!
その為に、今日ここでPV撮影する事にしたんだから。」
『やっぱりそうだったんだ。
タレントを売り出す為には、色々考えないといけないんだなぁ。
でも、何だか面白そうだね。』
「楽しいけど、頭脳とは別に、努力と体力も必要なんだから。」
『それに忍耐力もだろ!?』
「良く分かってるじゃん!
この世界、忍耐力がなけりゃ続けられないんだから。」
『アッ!
もう撮影始まってるんだ。
竹中早紀ちゃんって、ホントに乗馬が出きるんだ!
アイドルのプロフに書かれている事は、殆どが嘘っぱちだけど、早紀ちゃんはウソじゃなかったんだなぁ。』
「オイオイ、大ファンの亮太君が信じてあげなくっちゃ。
ストロボさえ、たかなかったら写真撮影もOKだぜ!
でも、音は入らない様に気を付けてな!」
『ハイ。高山君、ホントに有り難う。』
と言うと、バッグから一眼レフのデジタルカメラを取り出して、早速ズーム式の望遠レンズを取り付けていた。
カメラ小僧さながらの手早さで、レンズ交換を済ませたら、撮影で見切れないギリギリ迄近づき、撮影を始め出した。
俺は、新星MUSICの撮影クルーに近づき、アングルチェックをしているプロデューサーと一緒に、カメラを覗き込んだ。
「どうですか彼女?」
『なかなか良いよ!
動きに切れがあるし、カメラ写りもなかなかだよ。』
「まぁ、元々グラビアアイドルだったからねぇ。」
『無言で馬から飛び降りて、道場のドアを叩くところなんか、長年時代劇をやって来た大女優さながらの迫力だよ。』
「そんなぁ!
いくらなんでも褒めすぎでしょう。
まだ19才ですよ。」
『まぁ、これを観てくださいよ。』
と言うと、先程撮影された映像を見せてくれた。
「父の仇と誤解して、仇討ちの為にやって来た娘って設定だけど、かなりの目力だね!」
『それと、ここの部分を観てください。』