CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
と言われ、俺は再びモニターを覗き込んだ。
カメラオペレーター、フォーカスプラーがVaricamの操作を行い、先程のシーンを映し出した。
『馬も上手に乗りこなしているし、馬から飛び降りるところなんて、かなり危険なのにビビっていないでしょう。』
「ですねぇ。
普通、馬に慣れている役者さん達でも、馬から飛び降りる瞬間って表情が強張ったり、一瞬躊躇したりするのに。
彼女は、役に成りきっているし、一連の流れを壊して無いですよね!」
『それどころか、馬から飛び降りてから、道場のドアを叩く間に、益々鬼気迫る勢いを感じさせるよ。
常務、この子はアイドルなんかより、女優の方が確実に売れますよ。
凄い子を見つけてきましたね。』
「まぁね!
でも、ここまで出来る子だとは、嬉しい誤算ですよ!」
『では、今度は道場の中で山崎幸次郎さんとの殺陣のシーンを撮影しますから。
10分休憩の後に撮ります。
常務も中で観てください。』
「ハイ、分かりました。
それでは、皆さんに飲み物を出して一息入れさせてあげて下さいね!」
『分かりました。』
と言うと、カチンコを鳴らしていたセカンドに指示を出して、一旦休憩となった。
早紀は、スポーツドリンク片手に、こちらへやって来た。
「お疲れさん!」
『チャンスさん!
どうでした私!?』
「現場に要る時は、常務って呼んで下さい。
撮影シーン観させて貰ったよ!
なかなか良かった。
お芝居の経験有るのかい!?」
『いいえ!
良く家でテレビ観ながら、ドラマのワンシーンを真似したりって言うのは有りますが、経験は無いです。』
「次のシーンは、山崎幸次郎さんと殺陣のシーンに入るけど、この調子で頑張ってくださいね。
それから、ちょっとした油断が事故に繋がるから、集中してやって下さい。」
『ハイ。
分かりました常務。』
彼女から離れて、俺は山崎幸次郎のところに向かった。
「山崎さん、今日は無理言ってすみません。」
『高山常務、お早うございます。
こちらこそ、ご指名して頂き有り難うございます。
こんな私で良ければ、いつでも声かけて下さい。』
「まだ彼女は、殺陣の練習を始めて10日程のド素人なんで、指導しながらの撮影でお願いしますね。」
『任せて下さい。』