CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
カラオケボックスの個室に、俺とDJ-Cが向かい合って座っている。
「お前のお袋さんの日本でのデビューが失敗したのは、確かに新星MUSICに力が無かったからと思う。
でも、だからと言って、その時の復讐のつもりだろうが、俺に矛先を持って来るなよ!」
『何の事言ってんすか?』
「とぼけなくても良いよ!
お前の事は調べさせて貰ったから。
お袋さんの日本でのデビューに失敗して、親父さんが働き詰めで、生活に疲れていた時に、出来心で浮気したのがお袋さんにバレて、そのトバッチリがお前にきていたって事をな!」
『…………………』
「だから、お前が新星MUSICや俺のアボジ(親父)を恨み、そして俺達家族を妬んでいるって事は分かっているよ。」
『あぁ、恨んでいるさ!
それがどうした。
俺はこの19年間、親の愛情なんて感じた事なんか無いんだよ!』
「だからって、逆恨みだろうが!
あの時だって、韓国じゃあ大人気演歌歌手だったんだから、もう一度韓国に戻って活動するって方法も有ったのに、しなかったじゃないか!
まぁ、あん時は当時マネージャーだったお前の親父さんとの間に、お前が出来てしまってたからな!
それに、ハンヨナ(DJ-Cのお袋さん)は、スターの道よりも母親の道を選んだんだし。
親の愛情なんて感じた事が無かった!?
ふざけるんじゃないよ!
お袋さんは、お前のミルク代を稼ぐ為に、大スターなのに、キャバレーを渡り歩いて、ちっちゃなステージで慣れない日本語の歌を酔っ払い相手に歌い続けてたんだぞ!
それでも、そんな事言えるのか!?」
『そんなの嘘に決まってる!
プライドの高いオモニ(お袋)が、キャバレーなんかで唄う訳無いだろ!』
「だったら、直接お袋さんに聞いてみな!
あの当時、うちのアボジ(親父)も韓国からきたばかりで地盤も無かったしお金も無かったから、助けてあげられ無かったって嘆いていたよ。
だから、韓国でやり直すなら力を貸すよって言ったんだけど、お前のお袋さんに断られたよって言ってたぞ!」