ぼくのいないナツ
「いや、ぼくも何がなんだか……」

ぼくは楓さんにとりあえずわかっている状況を説明した。

「ふーん、じゃたぶんナツはアキのことだけ忘れてるわけねー」

ガリガリ君を豪快にかじる楓さん。
服装と言動に気を付けたらミスキャンパスもいけるのにといつも思う。
「だってー私のこともちゃんと覚えてるしー変なとこはここ最近なかった」

「ナツは冗談いうタイプじゃないしねー、忘れたふりはないと思うよー」

それはぼくも同意だ。しかし冗談だったらいいと心の片隅ではおもた。

「しかしショックでしょうよ、彼氏いませんって……」

いやー大変大変と椅子でぐるぐると周り始めた。

「……楓さん、楽しんでません」

「……あ、ばれた?」

「……」

「ごめんごめん」

「……ぼくはどうしたらいいんでしょうか」

思わずため息をついた。

「善は急げだしねー今日ここで餃子パーティーでも開こう」
「餃子パーティー?」

「ナツ呼んでね、とりあえず冗談の可能性もあるわけだし」
「……そうですよね」

「いろいろ確認しないといけないことがあるわけよ」

「橋本晃以外の記憶に異常はないか、とか、橋本晃の記憶がどれくらいないかとか、その他おかしななとこはないか諸々。」
「……」

「無くても一応病院には連れてく」

「……はい」

「しっかりしなさいよ、彼氏でしょうが」
「すみません……」
楓さんはそこらの男より遥かに男前だった。
「よっしゃ、今日は餃子だー」

イエーイと小躍りする楓さんはいつもの楓さんでこの人には一生頭が上がらないだろうと感じさせた。
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