Four Tethers〜絆〜
 能力を持つが故の悩み。
 それを、沙織には味わって欲しくなかった。

(あたしはあたし。沙織は、沙織だもんな)

 そこまで考えたところで、美味しそうなスパゲッティが出来上がる。

「お待たせしました、特製カルボナーラ、大盛りでございます♪」
「ありがと。頂きま〜す」

 綾は美味しそうに、夕食を食べ始める。

☆☆☆

 次の日の朝。
 いつものごとく、トーストをかじりながら新聞を読んでいた綾は、あることに気がついた。
 隅の方の小さな記事。『家出少女』と書いてある。昨日の新聞にも、そんな記事が載っていた。
 今日は統計まで出ている。

「この一ヶ月で、ここら辺だけで48人…多いな」

 都会でもないこの辺りにしては、数が多い。

「なーんか、うさんくさいよな…」
「え? なんか言った、綾?」
「いや」

 家出。蒸発。どれも、まわりの人間がそう思っているだけかも知れない。
 本人が家出や蒸発する動機に心当たりがあるから。
 心に傷を負っている事が、家出の原因だというのに。

「綾?」

 沙織に呼ばれて、はっと我に帰る綾。

「どうしたの?」
「あ、ごめん…ぼーっとしてた」

 綾は慌てて笑顔を作る。

「毎日新聞読みながら朝ご飯食べてると、ほんとにオヤジになっちゃうよ」
「なるかι」

 言いつつも、綾は新聞を閉じた。

「それはそうと、明日、だよ」
「え?」
「えっ…て…待ちに待った、愛しいダーリン達の帰宅の日、でしょ?」
「そういやそうだったな」

 あれだけ余裕がなかったのに…と、沙織は不思議に思った。
 何が新聞に、気になる記事でもあったのだろうか。

「沙織…あたし今日、出かけていいかな」

 トーストの最後の一口を食べて、綾は言った。

「どこいくの?」
「いや、大したことじゃないんだ」
「1人で勝手に危ないことするつもりじゃないでしょうねぇ?」

 鋭い質問に、綾はギクッと身を強ばらせた。
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