Four Tethers〜絆〜
ACT.3…『策 略』
綾はとりあえず、人がたくさんいる場所に行くことに決めた。
もし、自分の考えが正しいなら、またこの前のように“取り憑かれた”人間がすぐに現れる筈。
沙織のことは、一応悠からもらった防御用のお守りを置いてきた。
攻撃される事があってもある程度は守ってくれる。
そうでなくても、気配を感じればすぐに戻ることはできる。
綾は駅のある方へ向かい、適当な場所に陣取って道行く人々を見つめていた。
「…めっけ」
人間ウォッチングを始めてから何分もたたないうちに、早くも一人、取り憑かれている高校生くらいの女の子を見つけた。
「あいつは…」
綾は目を見張る。
その女の子は、前に綾がかき氷を売っていた時に毎日のように買いに来て「お友達になってください」と頼み込まれた女の子、美紀だ。
美紀はふらふらと、駅の裏手に向かい歩いている。
仕方なく、綾はその女の子の後をつけることにした。
すると、美紀は駅裏のマンションに入っていった。
建物や入り口に特に名前はついていない。
綾は、少し離れて建物を観察した。
「一番上、か」
結界が張ってある。
最上階だけ、薄いもやのようなものがかかっていた。
見たところ弱い結界らしく、綾にも容易に解くことが出来そうだ。
入り口はオートロックになっていた。
綾は非常階段を登る。
そして、結界の前に立った。
☆☆☆
「痛っ…!」
皿を洗っていた沙織は、胸を押さえてその場に蹲る。
どくん、どくん、と心臓が痛い。
――嫌な感じがする。
「綾…!」
胸の痛みが急速に強くなる。
同時に、頭の中に見たこともないような真っ暗な闇の中に、綾が足を踏み入れる画像が浮かんだ。
(行っちゃダメ…!)
声にならない。
痛みを堪えて、受話器に手をかける。
綾が持って行った携帯の番号を押したが、電源が入っていないというお決まりのアナウンスが流れるだけだった。
今朝携帯を渡した時は、確かに電源は入っていた筈なのに。
(どこか、危ない場所に入ったんだ…どうしよう…)
胸が痛い。
息が出来ない。
(……綾…!)
胸を押さえて、沙織はその場に倒れこんだ。
もし、自分の考えが正しいなら、またこの前のように“取り憑かれた”人間がすぐに現れる筈。
沙織のことは、一応悠からもらった防御用のお守りを置いてきた。
攻撃される事があってもある程度は守ってくれる。
そうでなくても、気配を感じればすぐに戻ることはできる。
綾は駅のある方へ向かい、適当な場所に陣取って道行く人々を見つめていた。
「…めっけ」
人間ウォッチングを始めてから何分もたたないうちに、早くも一人、取り憑かれている高校生くらいの女の子を見つけた。
「あいつは…」
綾は目を見張る。
その女の子は、前に綾がかき氷を売っていた時に毎日のように買いに来て「お友達になってください」と頼み込まれた女の子、美紀だ。
美紀はふらふらと、駅の裏手に向かい歩いている。
仕方なく、綾はその女の子の後をつけることにした。
すると、美紀は駅裏のマンションに入っていった。
建物や入り口に特に名前はついていない。
綾は、少し離れて建物を観察した。
「一番上、か」
結界が張ってある。
最上階だけ、薄いもやのようなものがかかっていた。
見たところ弱い結界らしく、綾にも容易に解くことが出来そうだ。
入り口はオートロックになっていた。
綾は非常階段を登る。
そして、結界の前に立った。
☆☆☆
「痛っ…!」
皿を洗っていた沙織は、胸を押さえてその場に蹲る。
どくん、どくん、と心臓が痛い。
――嫌な感じがする。
「綾…!」
胸の痛みが急速に強くなる。
同時に、頭の中に見たこともないような真っ暗な闇の中に、綾が足を踏み入れる画像が浮かんだ。
(行っちゃダメ…!)
声にならない。
痛みを堪えて、受話器に手をかける。
綾が持って行った携帯の番号を押したが、電源が入っていないというお決まりのアナウンスが流れるだけだった。
今朝携帯を渡した時は、確かに電源は入っていた筈なのに。
(どこか、危ない場所に入ったんだ…どうしよう…)
胸が痛い。
息が出来ない。
(……綾…!)
胸を押さえて、沙織はその場に倒れこんだ。