Four Tethers〜絆〜
☆☆☆
いつの間にか、美紀を見失っていた。
だが、不意に頭の中で声が響く。
(綾さん…)
美紀の声だった。
綾は、目の前の結界を見つめる。
決して複雑な結界ではない。
こういう事はあまり得意分野ではないが、これなら、綾でも十分に対処する事が出来る。
美紀は、この中にいるのだろうか。
すっと息を整えて、綾は結界に手を伸ばした。
「……!?」
その途端、差し出した右手が強く結界の中に引き込まれた。
慌てて手を引っ込めようとするが、どうあがいてもそこから逃れる事は出来なかった。
単純な結界だと思っていたのだが、綾が手を触れた瞬間、それは大きく様変わりした。
とても強力な、綾の力では太刀打ち出来ないような。
「くそ…っ!」
苦し紛れに、綾は左手で衝撃波を放つ。
だが、結界は全く弛むことはない。
「こんなのありかよっ!」
罠にはまったのだと気付いた時には、遅かった。
抵抗も虚しく、綾はその結界に引きずり込まれてしまう。
☆☆☆
意識は光の空間に漂っていた。
その中で、沙織は無意識に呼び続けている。
(悠くん…諒くん…助けて、綾が危ない…!)
手を伸ばし、空を掴んだと思ったその時、誰かが自分の手を握った。
☆☆☆
「沙織ちゃん…!」
肩を揺すられて、沙織はゆっくりと目を開ける。
そこには、悠と諒が立っていた。
「うそ…」
「ただいま、沙織ちゃん」
悠が言い終わらないうちに、沙織はそのシャツを両手で掴む。
「悠くん、綾が」
「分かってる。あのバカ、また考えずに1人で行動したな」
だが、悠も諒も表情が硬い。
悠は深刻な声音で言った。
「まいったな…綾の気配が、消えた」
「え?」
嫌な考えが頭の中をよぎる。
――まさか。
「消えたって…綾は…!」
「…いや、さっきまでは確かに気配を感じたんだけど…たった今、いきなり消えた」
気配が消えた。
沙織は、さっき脳裏に浮かんだ、暗闇に引きずり込まれる綾の姿を思い出した。
「きっと綾、危ない場所に入ったのよ…」
沙織は唇を噛んだ。
いつの間にか、美紀を見失っていた。
だが、不意に頭の中で声が響く。
(綾さん…)
美紀の声だった。
綾は、目の前の結界を見つめる。
決して複雑な結界ではない。
こういう事はあまり得意分野ではないが、これなら、綾でも十分に対処する事が出来る。
美紀は、この中にいるのだろうか。
すっと息を整えて、綾は結界に手を伸ばした。
「……!?」
その途端、差し出した右手が強く結界の中に引き込まれた。
慌てて手を引っ込めようとするが、どうあがいてもそこから逃れる事は出来なかった。
単純な結界だと思っていたのだが、綾が手を触れた瞬間、それは大きく様変わりした。
とても強力な、綾の力では太刀打ち出来ないような。
「くそ…っ!」
苦し紛れに、綾は左手で衝撃波を放つ。
だが、結界は全く弛むことはない。
「こんなのありかよっ!」
罠にはまったのだと気付いた時には、遅かった。
抵抗も虚しく、綾はその結界に引きずり込まれてしまう。
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意識は光の空間に漂っていた。
その中で、沙織は無意識に呼び続けている。
(悠くん…諒くん…助けて、綾が危ない…!)
手を伸ばし、空を掴んだと思ったその時、誰かが自分の手を握った。
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「沙織ちゃん…!」
肩を揺すられて、沙織はゆっくりと目を開ける。
そこには、悠と諒が立っていた。
「うそ…」
「ただいま、沙織ちゃん」
悠が言い終わらないうちに、沙織はそのシャツを両手で掴む。
「悠くん、綾が」
「分かってる。あのバカ、また考えずに1人で行動したな」
だが、悠も諒も表情が硬い。
悠は深刻な声音で言った。
「まいったな…綾の気配が、消えた」
「え?」
嫌な考えが頭の中をよぎる。
――まさか。
「消えたって…綾は…!」
「…いや、さっきまでは確かに気配を感じたんだけど…たった今、いきなり消えた」
気配が消えた。
沙織は、さっき脳裏に浮かんだ、暗闇に引きずり込まれる綾の姿を思い出した。
「きっと綾、危ない場所に入ったのよ…」
沙織は唇を噛んだ。