Four Tethers〜絆〜
「でも沙織ちゃん、よく知らせてくれたね」

 悠は言った。
 沙織はキョトンとして、悠を見返す。

「私が…知らせた?」
「少しずつ、力が使えるようになってきたんじゃない?」

 悠の言葉に、沙織は何となく思い当たることもあった。
 あの光の中でさっき二人を呼んだから、予定よりも一日早く戻って来たのか。
 それにしても、綾の気配が消えたというのは、どういうことなんだろう。

「とにかく、何があったのか聞かせろ、沙織」

 諒が言った。
 沙織は、悠達がいない間あったことを、全て二人に報告した。
 聞き終わり、諒が口を開く。

「俺達がいない間に、奴等が動き出した訳か。とにかく、綾が消えた辺りに行って探してくる」

 立ち上がった諒を、悠が止めた。

「待て。今回はいつもと勝手が違うんだ。…相手は人間なんだ、綾がそう簡単にやられるわけがない。ここは、まず敵の目的と正体を探るのが先だろ?」
「そんなこと言ったって…綾がずっと無事でいられる確証はねぇ!」

 珍しく諒が感情的になっていた。
 驚いて見ている沙織に気付き、諒は憮然として椅子に座る。

「諒くんごめん…私がしっかり見てなかったから…」
「いや、沙織のせいじゃない…あのバカが悪い」

 煙草を取り出して、諒が言った。

「でもどうやって、敵を探ればいいの?」

 沙織はそう言って、カウンター席に座る。
 その時、店の電話が鳴った。
 三人は顔を見合わせる。
 悠が沙織に目配せした。
 沙織は頷いて、受話器を持ち上げる。

「…はい、喫茶店【FREE-TIME】です」

 聞こえて来たのは、覚えのない男の声だった。

『…もう、大体察しはついているね?』

 悠も諒も、険しい表情で沙織の電話に耳を傾けている。

「あなた、誰なの?」
『あなたの大事なお友達を、預からせてもらっています』

 淡々とした口調で、男は言った。
 沙織は、受話器を持つ手に力を込める。
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