Four Tethers〜絆〜
「あなた…何をしたの!? 綾は無事なんでしょうね!」
『…その事で話をしたいんですが。これはあなたにとっても大事な話ですよ。駅前のビルの、一番上にあるラウンジに、夜7時に来ていただけますか?』
「…断れない状況を作ったのは、あなたでしょう?」
低い声で、沙織は言った。
受話器の向こうで、男はふっと笑う。
『では、お待ちしてます…そうそう、それと、話は二人きりでしたいので…まぁ、必然的に二人になるとは思いますがね』
それだけ言うと、相手は一方的に通話を終わらせた。
「駅前のビルの最上階にあるラウンジで、7時って…」
受話器を置いた沙織は、二人にそう告げた。
「どうだ、悠?」
諒が聞いた。
が、悠は首を横に振る。
「ダメだ…相手は結界の達人のようだね。居場所が掴めない…もしかしたら、相手は能力者なのかも知れないね」
じゃあ、今回の相手は“取り憑かれた”人間ではなく、悠達のような存在でもない、沙織や綾と同じ、能力を持った人間なのか。
「そんなのは初めてだな」
諒は苛々とそう呟き、日本目の煙草に火を点けた。
今の時点で分かっているのは、今回の敵は人間だということだけだった。
「まずはそいつの目的を聞き出さないとね」
悠が言った。
綾はおそらく、その相手が作り出した結界の中に閉じこめられている。
携帯の電波も遮断されるような、強力に閉ざされた空間に。
「でも、わからないな…相手が人間なら、何故私たちを“監視”するようなことをしたの?」
敵はこの何日か、明らかに自分達の目の前に現われていた。
もし何かを仕掛けるつもりなら、もうとっくに攻撃を仕掛けてきてもおかしくない。
なのに、常に近くで監視しておきながら、何もして来なかった。