Four Tethers〜絆〜
 そして、辺りがすっかり暗くなった頃、いきなり部屋の電気が点いた。
 綾は鋭い視線を部屋の入り口に向ける。
 すると、背の高い若い男が部屋に入ってくる。

「…誰だよ」

 座ったままの姿勢だが、いつでも攻撃できるように神経を尖らせる。

「無駄な事はよしたほうがいい…ここでは、キミの力は使えない」

 その男は言った。
 これが今回の敵の“中心”なのか。
 ――だが。

「あんた…人間?」

 思わず、綾は聞いてみる。

「キミだって人間だろう?」

 バカにしたような笑みを浮かべ、男は答えた。
 その態度に、明らかにむっとする綾。

「気安く呼ばれる筋合いはないね。知り合った覚えはないんだけどな!」

 言いつつ、綾はその手から衝撃波を繰り出した。
 だが、全く力が出ない。
 それでも綾は、男に飛び掛かる。
 自分でも驚く程、やけに体の動きが遅かった。

「……っ…」

 気のせいじゃない、綾はだんだん体の力が抜けていくのを感じた。
 そして、立っていることすらままならず、その場に膝をつく。
 これが、この結界の作用なのか。

「少しは理解してもらえたかな?」
「何の為に…こんなこと…」

 問いかけに、男はしゃがみこんだままの綾の目の前に座る。

「僕は今、強力な力を得て仲間を増やしている最中なんだ」

 綾は男を睨み付ける。
 男はまるでそれを気にせずに続けた。

「この世界を、自分の思い通りにする」
「本気でそんな事言ってるのか、お前…バカじゃねえの?」

 そう言った途端、男に首を掴まれ、床に押し倒された。

「あまり生意気な口は聞かない方がいい…殺されないようにね」

 ぎりぎりと首を締め付けられて、息が出来ない。
 ただの馬鹿力じゃない、体中が痺れるような感覚だ。
 もがこうとしても、体に力が入らない。

「選択肢は二つだ。俺に従って生き延びるか、従わずに死ぬか」
「うるさい…お前、あたしのタイプじゃねぇんだよ」

 その途端、男はそのまま綾の身体を壁に向かって投げつけた。
 受け身も取れずに、綾はそのまま壁に激突し、床に転がる。
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