Four Tethers〜絆〜
 綾は息苦しさと激痛に、身動きも出来ずにいる。

「従う気はない、という事だな」

 倒れたままの綾を見下ろし、男は言った。

「…どうせナンパされるなら…もっといい男が、良かったよな…」

 擦れた声で言う綾。
 男はその右手に、気を集中させた。
 そして、動けないままの綾の方に、その手をすっと差し出す。

(やっぱこいつ…能力者か…)

 動けない。
 このまま衝撃波を放たれたら、とても避けることは出来ない。
 それでも綾は、何とか動こうと身体に力を入れる。
 その時、隣の部屋から女の声がした。

「そろそろ出かける時間よ、一樹」

 強力な力を得た。
 男はそう言った。
 その強力な力の持ち主というのが、この女なのか。
 今回の相手は、少なくとも二人だ。
 綾は気配を探ろうとしたが、これも結界の作用なのか、隣の部屋だというのに相手が何者なのか分からなかった。
 人間なのか、そうでないのかも。

「あぁ、もうそんな時間か…」

 一樹と呼ばれた男は、そう言って部屋の入り口に向かった。

「危うく殺すところだったよ…。まだ利用価値はあるのにね」

 倒れたままの綾を見つめ、冷ややかに一樹は言った。

「…これから何をするか教えようか、綾」

 名前がバレている。
 綾は、起き上がれないまま、顔だけ上げて一樹を見上げた。
 素性が知れているという事なのか。

「…聞きたくないね。どうせ、ロクなことじゃねぇんだろ…」

 やっと上半身だけ起こして、綾はその申し出をきっぱりと断る。

「…大事な親友のことでも?」
「…何だよそれ…!」

 沙織に何かをするつもりなのか。
 焦る綾を見て楽しむかのように、一樹は笑みを浮かべる。

「…彼女は俺になびくかな?」
「…んな訳ないだろ、お前なんかに」

 今、沙織を守ってくれる悠と諒はいない。
 しかも、自分をダシに使われでもしたら…沙織は。
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