Four Tethers〜絆〜
「あいつに手を出すな。あたしが許さない…!」

 綾は起き上がる。
 自分でも驚くほど低い声が出た。

「彼女の能力、僕はどうしても手に入れたいんだよ、綾」

 沙織の能力を手に入れる。
 でも、一体何故?
 同じ人間がこの世界を脅かそうとするなんて、これが初めてだった。
 だが気になるのは、隣の部屋にいるあの女の存在。

「僕はこれから、彼女と会って話をしてくるよ。僕に協力してくれるように、お願いするつもりだ」

 そう言って一樹は、綾に背を向けた。

「まだ話は終わってないよ!」

 綾は再度、一樹に飛び掛かった。
 だが、まだ痺れている体が言うことを聞かず、綾は倒れた。
 一樹はそんな綾をあざ笑うかのように見る。

「元気だけは人一倍なんだね、綾。本当ならこの空間で動くことすら出来ない筈なのに…」

 確かに一樹の言うとおり、綾の体力は限界に近かった。
 それでも、何とかしてこの男を止めなければならない。
 だが一樹は綾に近寄ると、軽くその肩に触れる。

「疲れただろ。そろそろ、眠る時間だよ…綾」

 だんだん気が遠くなり、綾はソファに倒れ込んだ。

(待てよ…!)

 薄れる意識の中で、一樹が部屋を出ていくのが見えた。

「…これで、交渉しやすくなるな」
「そうね。よかったわ」

 二人の淡々とした会話が聞こえたのを最後に、綾は意識を失った。
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