Four Tethers〜絆〜
 いつも守られるばかり。だから、必ず綾を助けたいと思った。
 息を整え、最上階のラウンジの重いドアを開ける。店の中は薄暗かった。
 ところどころに、小さなランプが置いてあるだけ。

「よく来たね」
「……!」

 いきなり後ろから肩を抱かれ、沙織は驚いてその手を振り払った。
 その声は、確かに電話と同じ。

「座って、沙織」
「綾はどこ?」

 沙織は自分の名前を呼ばれたのに多少驚きながらも、男を睨む。

「まず、座ってくれないか? じゃないとゆっくり話も出来ない。僕としても、手荒なことはしたくないんだよ。キミにも、綾にも」

 そう言われて、仕方なく沙織は椅子に座った。


「どうして、こんなことをするの?」
「まぁ、カクテルでも飲む?」

 こっちは必死なのだ。
 それなのに、男のちゃらちゃらとした振る舞いが、沙織は気に入らなかった。

「飲まない。彼女はどこなの?」

 頑として譲らない沙織の態度に、男は肩を竦めた。

「…今の所、無事だよ。だけど、それは沙織次第」
「…どういうこと?」
「俺の、力になれ」
「…あなた、何を言ってるの?」

 怒りを覚える。
 こんな奴に、何故命令されなきゃならないのか。

「俺の“目的”の為に、沙織の能力が必要だ」
「目的?」

 男は頷く。

「僕と沙織が一緒になれば、支配者になれる」
「本気で言っているの? どうかしてるわ」
「さすが“親友”だね。同じ反応するんだ」

 そう言って男は可笑しそうに笑う。

「当たり前でしょ。まともな神経を持っているなら、誰だって同じ事を言うと思うけど」

 男はそれでも余裕の表情を浮かべて、にやりと笑う。

「沙織はまだ、自分の本当の力を知らないからね」
「……!」

 男の言葉に、沙織は何も言い返せなかった。

「下で戦っている連中より、僕と手を組んだ方がキミの能力を引き出せる」
「…何なのよ! さっきから黙って聞いていれば!」

 沙織は声を荒げた。
< 114 / 156 >

この作品をシェア

pagetop