Four Tethers〜絆〜
「どけっ!」

 攻撃を仕掛けようとして、諒はなんとか思いとどまる。

「諒、かまわず先に行けっ!」

 悠が叫ぶ。
 諒は人ごみをかわして跳躍すると、駅の建物の屋根に登った。
 追い掛ける悠と沙織は、物凄い人数に囲まれ、だんだんと身動きがとれなくなる。
 諒は、駅裏を見渡した。

「…あそこか」

 最上階の一室が不自然にもぎとられたように見えるマンションがあった。
 多分、そこにも結界が張られているのだろう。
 綾がいるのはそこだ。
 諒はその建物へ急いだ。

☆☆☆

 息が切れる。
 意識を取り戻してから、重い空気の中で暴れるだけ暴れた。
 部屋の中には時計もなく、今何時なのかも分からない。
 ――今頃、沙織は。

「あ〜もう、ムカつくっ!」

 綾は、絶対に割れないベランダに続く窓ガラスを思いっきり蹴り付けた。
 その時、また誰かがこの部屋に入ってくる気配がする。
 顔を上げると、体つきのがっちりした男が二人、部屋に入ってくる。
 綾は二人を睨み付けた。

「遊びにでも来たの? あたし今忙しいんだけどね」

 ふざけた口調で、綾は言った。

「始末しろと言われた」

 男の一人が口を開く。
 綾は険しい表情を浮かべた。

「さてはあの野郎、沙織に振られた腹いせにあんた達をよこしたね?」

 男がじりじりと綾に近寄ってくる。

「ほんっっとに…」

 ふっ、と息を吐いて、綾は動く。

「女の腐ったような奴!」
「ぐっ…」

 綾は、力一杯、男に回し蹴りををくらわせた。
 たまらずに男は倒れる。
 結界の効力が、徐々に薄れてきている。
 力も、さっきよりは発揮しやすくなっていた。
 もう一人の男に、腕を掴まれる。
 だが綾は、反転させて掴まれた腕を振り払った。
 そしてすぐさま、相手の鳩尾に“気”の力を込めた一撃をお見舞いした。
 そして、振り向きざまに、起きてきたもう一人の男の顔に、同じように気を込めた回し蹴りをくらわす。
 二人の男は床に倒れた。

「あたし今、滅茶苦茶機嫌が悪いんだよっ!」

 息を切らしながら、綾は言った。
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