Four Tethers〜絆〜

ACT.3…『期 限』

 それから丸1日過ぎても、沙織は食事も取らずに部屋から一歩も出て来なかった。
 心配して悠がスープを持って行ったが、一人にしてほしいと突き返された。
 店の方は相変わらず開店休業状態で、沙織があんな調子でも仕事面で困ることはなかったのだが。
 そんな沙織の態度を咎めることもなく、ただじっと見守るだけの三人。
 …ではなく、二人。

「う〜…」

 苛々と、煙草のフィルターを食い千切りそうな勢いの綾は、徐々にストレスがたまってきているようだった。

(沙織の事より、このアホ暴走娘を押さえることの方が大変だな)

 店の中を歩き回っている綾を見ながら、諒はそんなことを真剣に考えている。

「いい加減落ち着けよ、綾」

 見兼ねた諒が言った。

「落ち着いてるよっ!」
「…どこがだよ」
「だって…あたしもう見てられないよ、あいつ…何とかしてやれないの!?」

 あんな沙織を見たのは初めてだ。
 あの一樹という男は、相当本人にとってショックなことを沙織に吹き込んだに違いない。
 そう思うと、綾はいてもたってもいられなかった。

「やっぱヤツ探してくる」
「いや待て待て」

 本当に、こんな状態の綾は手が付けられない。
 諒は止めるのに必死だ。

「おい悠〜、お前も何とか言えよ!」

 珍しく諒が、悠に助けを求めている。

「だって悠にも気配が分からないんだろ!? だったら自分の足で歩いて探すしかないじゃんか!」

 腕を掴む諒を引きずったまま、綾は店の入り口に向かっている。

「…それで見つかればいいんだけどな」

 店のカウンターの席で、悠は呑気に煙草を吸いながら言った。
 そんな態度も、綾の気に障ったらしい。

「よくそんなに落ち着いていられるよね、悠!」

 掴まれていた諒の手を振り払って、綾は悠に詰め寄った。

「今、何か出来る事あるだろ? じっとしてるならあのキザ野郎探してさ…!」
「探してどうするんだ、綾?」

 悠は変わらずに冷静な口調で言った。

「ぶん殴ってくる!」
「…無駄だ。お前の力じゃ、あいつの強力な結界を破ることは出来ない」
「………!」

 真意を突かれ、思わず黙り込む綾。
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