Four Tethers〜絆〜
「もしかすると奴は、俺達よりも強い力を持っているかも知れない。そんな奴の所へ1人で乗り込んで行ったら、あっという間に殺されて終わりだな」

 容赦のない悠の言葉。
 だが、間違ってはいなかった。
 それを嫌というほど理解しているから、綾も反論出来ずにいる。
 諒はあえて口を挟まなかった。

「…じ…じゃあどうするんだよ…このままじっと待ってろって…?」
「その通り。分かってくれたか、綾?」

 そう言うと、悠はにっこりと笑顔を作った。
 有無を言わせないつもりなのだ。
 長年付き合ってきた感覚で、こんな時の悠にはどう頑張っても反論出来ないということを、綾は知っていた。

「分かった…で、でも我慢できないかも…」

 自信がなさそうに、綾は言った。

「…それも分かってる。だけど、我慢、だよ」

 近寄ってきた悠に、ぽんぽん、と頭を撫でられる。

(なんであたし、こんなに軽くあしらわれるかなぁ)

 綾はつい、そんなことを考えてしまう。
 悠や諒の言うこともよく理解しているつもりだが、あんな沙織の姿を黙って見ているのも辛い。

「…今は、沙織ちゃん本人に判断を任せることにしよう…」

 悠はそう言うとまたカウンターの席に戻り、煙草を取り出した。
 綾はそんな悠の目の前にある灰皿を見て、目を疑う。
 まだ午前中だと言うのに、吸殻が山のように積み上がっていた。

「…おい、諒」

 諒もそれを見て、ため息をつく。

「綾…お前も吸えば?」
「…いや、いい…」

 本当に苛々しているのは悠なのかも知れない。
 ここは絶対に言うことを聞いておこう、と綾は心に決めた。

☆☆☆

 次の日になっても、状況は全く変わらなかった。
 沙織はクッションを抱え、自分の部屋の隅で蹲まっていた。
 考えても考えても、答えは見つからない。

「あと一日…」

 呟いてみる。
 ずっと自分の能力の事を考えていた。
 もし本当に、一樹と同じ力を自分も持っているというのなら。
 彼の言う“支配”というのは可能なことだと思う。
 だけど自分の力はまだ全然コントロールすることが出来ないのだ。
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