Four Tethers〜絆〜
☆☆☆

 壊されていたのは【FREE-TIME】だけではなかった。
 街中のあらゆる店が破壊されている。
 しかも、街中の人間が、支配されていた。

「初めてだな、こんな事…」

 諒はその光景を見て、眉をしかめる。
 昨日は何も、異変は感じられなかった。
 あちこちで建物が破壊され、暴動とも思える騒ぎが起きている。

「…これが“解放”なわけね」

 建物の屋根の上からそれを見下ろして、うんざりした様子で綾が呟く。
 そんな中、悠長に道を歩いていたら、たちまち取り囲まれて攻撃されてしまうだろう。
 彼らはみんな、操られた状態だった。
 港へは車で五分くらいの距離だったのだが、交通規制も何もない為“徒歩”で行くことにする。
 車で行くよりも、この方が断然早かった。

「もうすぐだ」

 屋根伝いに跳躍しながら、悠が言った。
 港に造りかけの倉庫がある。
 人影はどこにも見当たらなかった。

「悠、本当にここなのか?」

 地面に降り立ち、辺りを見回しながら綾が言った。
 感覚の一番弱い綾だからなのか、敵の気配などまるで感じられない。

「あぁ、間違いなくここだ」

 悠はそう断言した。
 だが、肝心の敵の姿が見えない。

「能力者って…人間だろ? 気配がするけど姿が見えないって」

 綾が言い終わらないうちに、どこからか轟音が響いた。

「何!?」
「上だっ!」

 諒が叫ぶのと同時に、三人はその場を飛びのいた。
 一瞬遅れて、たった今まで三人がいた場所の地面に、鉄骨が突き刺さる。

「何なんだよ、これっ!」

 綾は突き刺さったままの鉄骨を見上げて言った。
 そしてそれが飛んで来た方向に目を向けると、倉庫の屋根の上に、一人の女が立っていた。
 その女を見て、綾は目を見張る。

「お前…!」

 その女…いや、女の子には、見覚えがあった。
 あの女子高生、美紀だった。
 美紀の手には、もう一本の鉄骨が、軽々と持ち上げられていた。
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