Four Tethers〜絆〜
「どういうことだ、悠?」

 諒も多少息が上がっている。どうやら同じ事を考えていたようだった。

「わからん…綾の方も、心配だ」
「あぁ。沙織も、だろ? 早いとこ片付けて…」

 言っているうちに、男が目の前に現れる。
 諒に向かって手をかざす。

「この…っ」

 一瞬早く悠が動き、諒を押し退ける。
 そして、背中に衝撃波をもろにくらった。

「悠!」

 諒がすかさず、その手から閃光を放つ。
 だが、物凄い早さでかわされた。
 そして、飛びのいたその体制から、また衝撃波を繰り出す。
 諒は防御の体制をとるが、あまりの力に体ごと吹き飛ばされる。
 倉庫の壁に強く身体を打ちつけ、諒はしばらく動けないでいた。

「他愛もないな…それだけの力で、俺に…あの人に、勝てるとでも思ったのか」

 男は空中に浮いたまま、諒を見下ろした。

「さぁな…やってみなくちゃわからねェだろ」

 諒はゆっくりと、瓦礫の中から立ち上がる。

「無駄なこと」

 そう言って、男は手を上にかざした。
 諒は気を両手に集中させる。
 光が集まり、剣のようなものを形成した。
 男が手を振りかざすのよりも早く、諒が動く。
 一気に間合いを詰め、気で作り出した剣が男の脇腹に突き刺さった。
 ――だが。
 全く男は動じない。
 愕然とする諒は肩を掴まれ、至近距離からもろに衝撃をくらう。
 その身体は、まるで紙切れのように宙を舞った。

「諒っ!」

 悠が叫ぶ。
 その時、頭上から轟音が響いた。
 見上げると、綾が吹き飛ばされて、こっちに向かって真っすぐに落ちてくる。

「綾!」

 悠がすぐに、防御の壁で綾を受け止めた。

「大丈夫か」

 かなりの激痛に耐えながら、綾は何とか起き上がった。

「悠…あいつ、おかしいよ…あれだけ力を使ってるのに、まるで疲れる様子がない」
「こっちも、だ」

 敵は、まるで底なしのパワーがどんどん沸いてくるようだ。
 綾は、倒れている諒とそれを見下ろしている男に気が付いた。

「何だよ、諒ピンチなのか?」
「あぁ、そうだな。だけどお前もピンチだったんじゃないのか?」

 綾も、小さい傷を体中に負っていた。
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