Four Tethers〜絆〜

ACT.2…『追 跡』

 時間にしてみれば、かなり長い間、攻防が続いていた。
 そのせいか、いい加減動きも鈍ってくる。
 悠の姿が見えなくなっているのには、さっきから気付いていた。

「綾」

 お互いに間をとって対峙する。
 神経は相手の動きに集中させたまま、諒は綾を呼んだ。

「…あぁ。あいつら、悠の動きの方に気を取られてる」

 諒の言いたい事は分かっている。
 悠の姿が見えなくなってから、相手は少しずつ、集中が乱れてきているようだった。
 このチャンスを逃す手はない。
 防御の悠がいない今、攻撃の一手に出て相手を倒し、一刻も早く悠と合流する。
 諒は、一瞬だけ綾と視線を交わす。

「諒! デカいのまかせたっ!」

 綾は美紀が逃げ込んだ(誘い込んだ?)倉庫の中へ走って行った。

「なぁ! 戦うだけじゃなくて、少しは話し合おうよ!」

 倉庫に入るなり、綾は叫ぶ。
 美紀の攻撃のパターンは、大体読めてきた。
 恐らく念力のようなものを使い、あらゆる物に気を込めてこっちに投げつける。
 四方八方から飛んで来るので、余程集中しないと避けられない。
 それよりも気をつけなければいけないのは、さっきの雷のような衝撃波だった。
 攻撃を避けつつも、綾は何とか話をしようと試みる。

「今まで何をされてきたのか知らないけどな、自分が今何をしてるか、よく考えろっ!」
「うるさいっ! 何も知らないくせにっ!」
「じゃあ何でもっと早く話してくれなかったんだよ!」

 あれだけ仲良くしてたじゃねぇか、と言う綾の言葉に、美紀は一瞬、攻撃の手を止めた。

「だって…誰も信じてくれないじゃない!」

 誰も、信じてはくれない。
 …分かっている。
 誰にも相談出来なかったから、美紀はずっと悩んでいた。
 どうしてもっと早く気付いてやれなかったのか。
 今考えたら、美紀はいつも、一人だった。

「あと少しで、私の思い通りの世界になるんだから!」
「ならないっ!」

 綾は一気に間合いを詰める。
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