Four Tethers〜絆〜

ACT.3…『死 闘』

 諒はかなりのダメージを受けていた。
 とにかく、相手の底なしのパワーに押され気味だった。
 綾がいるはずの倉庫の方からは、さっきから物凄い音が聞こえ続けている。
 状況は変わらないのに、時間だけがどんどん過ぎていく。
 諒は、男めがけて思い切り衝撃波を放つ。
 だが、その攻撃はあっさりかわされて、間髪入れずに反撃してくる。

「今…っ!」

 攻撃の時に出来る一瞬の隙をついて、諒は至近距離から攻撃した。
 相手の衝撃波が肩を掠めるが、こっちの攻撃は、今度はまともにヒットする。
 一瞬男は怯んだ。
 そこへ、また攻撃する。
 信じられないスピードの目まぐるしい攻防戦だった。
 だがお互いに、決定的なダメージは与えられずにいた。
 二人は、少し離れた距離に立ち、お互いの次の攻撃のタイミングを計っていた。

☆☆☆

 一方、綾は一向に美紀に手出しをしなかった。
 美紀が繰り出す攻撃を、ただひたすら避けるだけ。

「なぁ、ちょっとはあたしの話を聞いてくれても…!」

 倉庫内の荷物の陰に隠れながら、綾は小声で言った。
 始めからずっと説得を試みているのだが、相手はまるで話を聞こうとはしない。
 かなり体力も落ちてきていた。
 息があがる。
 それなのに美紀は、汗ひとつかいていない。

「ったく…なんて強情女」

 自分のことは思い切り棚に上げたりしているのだが。
 しかし、こんなところでいつまでも時間を費やす訳にはいなかなった。
 自分か諒どちらかだけでも、早く悠を追いかけなければ。

「自分の思い通りの世界を作って、それでどうするんだよ!」

 こっち目がけて飛んできたコンテナを、綾は腕で弾く。
 空中に浮いたままの美紀の動きが、一瞬だけ止まった。
 だがすぐに、美紀はまた綾に向かって気を込めた物を投げ付けてくる。

「確かにあたし達にとっちゃ、理想だよ! だけどなぁ!」

 もう一つのコンテナを、綾は衝撃波で壊した。

「そんな事したら、お前はずっと孤独じゃねぇか!!」

 その言葉を聞いた途端、美紀の動きが完全に止まった。
 肩で息をしながら、綾は真っ直ぐに美紀を見上げた。
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