Four Tethers〜絆〜
【終 章】
ACT.1…『覚 醒』
…まるで、宙に浮くジェル状のベッドのような結界の中に、沙織は横たわっていた。
頭の中の意識ははっきりしているのに、重くまとわりつく空気のせいか、思うように身体が動かせない。
自分が一体何なのか、沙織はずっと考えていた。
ここに来れば、何か答えが見付かるような気がした。
「もう少しで、キミが一体何者なのかが解るよ、沙織…」
結界の外で、一樹がそう言っている。
会話はすでに口頭ではなく、意識の中で交わされていた。
「私の…存在価値も?」
ゆらゆらと揺れて、心地いい。
沙織は、目を閉じてそう聞いた。
「そうだね…存在価値も」
何の為に自分がここに“在る”のか。
自分という存在は何なのか。
今考えるのは、それだけだった。
体の奥の意識の中に、小さな小さな光がある。
沙織はそれに、少しずつ意識を近づけていく。
その間に、色々な物が見えた。
(記憶…?)
両親や友達、今まで会ったことのある人たち、行ったことのある場所…それらが次々と呼び覚まされていく。
しかも、今までに出会った人々の意識までも、沙織は鮮明に感じることが出来た。
それは思い出ではなく、何もかも全てが“真実”だった。
沙織はその中で友達にも両親にも、本当に愛されていた。
――そしてまた、時間は遡っていく。
…生まれた時にまで。
両親と血がつながっていないのは知っている。
しかし、出生の秘密はまだ知らない。
沙織は一瞬、躊躇った。
「それが…真実だよ、沙織。キミの全てだ」
一樹の言葉が、背中を押した。
沙織は、もっと奥へと意識を走らせる。
☆☆☆
灯台の入り口が見えた。
いつだったか、沙織と出会って初めて敵と戦った時に来た、あの灯台だ。
「…沙織…!」
肩を押さえる。
出血が思ったよりひどい。
灯台が間近に迫った場所で、綾は前方を見上げた。
その刹那、綾は振り向きざまに右手を振りかざす。
一筋の閃光が、真後ろの空間を突き抜けた。
「邪魔は、させない…」
女は無傷で立っていた。
綾は真っ直ぐに女を睨み付ける。
悠と諒は今、この世界に存在しない。
実体化している体ごと、消されてしまったのか。
頭の中の意識ははっきりしているのに、重くまとわりつく空気のせいか、思うように身体が動かせない。
自分が一体何なのか、沙織はずっと考えていた。
ここに来れば、何か答えが見付かるような気がした。
「もう少しで、キミが一体何者なのかが解るよ、沙織…」
結界の外で、一樹がそう言っている。
会話はすでに口頭ではなく、意識の中で交わされていた。
「私の…存在価値も?」
ゆらゆらと揺れて、心地いい。
沙織は、目を閉じてそう聞いた。
「そうだね…存在価値も」
何の為に自分がここに“在る”のか。
自分という存在は何なのか。
今考えるのは、それだけだった。
体の奥の意識の中に、小さな小さな光がある。
沙織はそれに、少しずつ意識を近づけていく。
その間に、色々な物が見えた。
(記憶…?)
両親や友達、今まで会ったことのある人たち、行ったことのある場所…それらが次々と呼び覚まされていく。
しかも、今までに出会った人々の意識までも、沙織は鮮明に感じることが出来た。
それは思い出ではなく、何もかも全てが“真実”だった。
沙織はその中で友達にも両親にも、本当に愛されていた。
――そしてまた、時間は遡っていく。
…生まれた時にまで。
両親と血がつながっていないのは知っている。
しかし、出生の秘密はまだ知らない。
沙織は一瞬、躊躇った。
「それが…真実だよ、沙織。キミの全てだ」
一樹の言葉が、背中を押した。
沙織は、もっと奥へと意識を走らせる。
☆☆☆
灯台の入り口が見えた。
いつだったか、沙織と出会って初めて敵と戦った時に来た、あの灯台だ。
「…沙織…!」
肩を押さえる。
出血が思ったよりひどい。
灯台が間近に迫った場所で、綾は前方を見上げた。
その刹那、綾は振り向きざまに右手を振りかざす。
一筋の閃光が、真後ろの空間を突き抜けた。
「邪魔は、させない…」
女は無傷で立っていた。
綾は真っ直ぐに女を睨み付ける。
悠と諒は今、この世界に存在しない。
実体化している体ごと、消されてしまったのか。