Four Tethers〜絆〜
「…沙織…!」

 間に合わなかったのか。
 いや、まだだ。
 まだ、諦めない。

「…一気に片付ける」

 同化した力で、綾は全身全霊をかけて攻撃を繰り出す。
 ――綾の姿に、悠と諒が重なったように見えた。
 女は綾のただならぬバワーを感じて、綾に向かって激しい攻撃を繰り出した。
 だがそれは、防御の壁によってことご弾かれた。
 そして剣は、女の胸をまっすぐに突き刺す。

「…ば…かな…」

 そんな言葉を残して、女は霧のように空中に飛散した。
 同時に綾も、地面に崩れ落ちる。
 しばらくそのまま、動けなかった。

『よくやったな、綾』

 いつもの調子で、ぽんぽん、と頭を撫でられる。
 …だが、そこに肉体はない。
 慣れ親しんだ気配は、だんだんと薄れていく。

「ばか…消えんな…」

 涙が地面に吸い込まれた。

「嫌だよ…あたしを残して行かないで…お願い…!」

 二人がいなくなる。
 そう考えただけで、息が出来ない。苦しい…!

『俺達はここにいる…もう一回立たなきゃダメだ、綾』

 悠の声。

『ここで倒れている場合じゃねえよ。大事な友達、だろ?』

 諒の声。

「……っ」

 綾は、地面に両手をついて、立ち上がった。
 そして、灯台に向かって、歩き出す。

☆☆☆

 …自分が生まれた訳。
 一樹の声に後押しされ、沙織はまた奥へと進む。
 始めは小さな点だった光が、徐々に大きくなって沙織の意識を包み込む。
 あまりの眩しさに、沙織は思わず目を閉じかけた。
 だがそこには、沙織が求めていた“真実”があった。

(…これが…私…)

 記憶を辿り、眠っていた力を呼び起こす。
 物凄い量のエネルギーが、体の中に入り込んできた。
 普通なら耐えきれない程の膨大な力。
 だが沙織には、それを許容するだけの器があった。

(そうか…これが、私…)

 これが、答え。
 沙織はゆっくりと目を閉じて、自分の身体を抱き締めた。
 何もかも、忘れていた。
< 148 / 156 >

この作品をシェア

pagetop