Four Tethers〜絆〜

ACT.2…『終 焉』

 一瞬でも力を抜くと、手足が千切れてしまうような感覚に襲われる。

「…こ…の…!」

 港で戦った美紀の思い。
 操られた人々の思い。
 消された悠と諒の思い。
 ――そして、沙織の思い。

「お前なんかに…!」

 それを思うと、手足が千切れようが、絶対にここで、諦める訳にはいかない。
 ――例え、一人になろうとも。
 綾は、ありったけの力を振り絞った。

☆☆☆

 心地よい意識の空間の中で、沙織は漂っていた。

「沙織ちゃん…」

 声がして見上げると、悠と諒が立っている。

「悠くん…私、私が誰なのか、ようやく理解できたの…」

 悠は優しく笑って「そう…」とだけ、答える。

「だから今は、とても心地いいの…ずっと、こうしていたい位」

 ゆらゆら、ゆらゆら。
 このままずっと、身体の何処にも力を入れずに。

「――沙織を待ってる…が、いるんだよ…」

 諒が言った。
 沙織はうつろにそれを聞いている。
 自分を、待っている…?

「頼む。…は沙織を、今この瞬間もずっと、待ってる…!」

 悲痛な諒の言葉。
 揺らめく意識の中で、肝心の言葉が、よく聞こえなかった。

「…ずっと、待ってる…?」

 …待っている…遠くでこだまする声が、だんだん近くなる。

「俺達はもう…」

 悠の声も沈んでいた。
 言葉の最後が、聞こえない。
 …聞こえないから、考える。
 心を動かして。
 ――…が、沙織を待ってる…。
 沙織は夢から覚めるように、ゆっくりと今来た意識の中を戻っていく。
 近すぎる存在の元へ 。

「綾…!!」

☆☆☆

「沙織!!」

 沙織が一樹の結界を打ち破るのと、綾が一樹めがけて渾身の一撃を放ったのは、殆ど同時だった。
 一樹の体は弾き飛ばされ、後ろの壁に激突する。
 空間の歪みも消えた。

「ば、ばかな! そんなはずが…っ!」

 強化していた筈の結界が破られた。
 一樹は、驚愕の表情を浮かべる。

「大ありだ、この野郎!」

 綾は両手を高く振り上げた。
 そして、一樹に向かって一気にそれを振り下ろす。

「ぅわぁぁっ…!!」

 一樹は叫んだ。
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