Four Tethers〜絆〜
 ――が、いつまでたっても衝撃は受けない。

「なんちゃって♪」

 にやにやしながら、綾が言った。

「…お礼を言おうかな」

 綾の隣に立ち、沙織が言った。

「あなたのおかげで、自分が何者だったのか、思い出した…」

 一樹は、ふらふらと立ち上がる。
 そして、沙織に向かって衝撃波を放とうとした。
 だが、力が全く出ない。
 沙織の体から滲み出ている強大なパワーが、一樹の能力を吸収しているようだった。

「もう、あなたの夢は終わったわ…そして、能力も消えた」

 沙織は結界から抜け出す時に、一樹の能力を奪い去っていた。
 力なくうなだれるだけの一樹。
 沙織は、綾の方に向き直る。

「綾…ありがとう、ごめんね」
「いいんだよ、沙織」

 二人は見つめ合って笑う。

「さぁ、まだやることがあるの。行きましょう…」

 沙織はそう言って、灯台の階段を登った。
 綾も後からついていく。
 一番上まで登ると、綺麗な海が目の前に広がっている。

「綺麗…」

 もうすぐ沈もうとしている太陽の光が、海面に反射している。

「綾。私、この世界が大好き」
「あぁ…」
「この自然も景色も、動物も人間も、みんな大好き」
「そうだね。あたしも好きだよ…」

 綾は、ふと沙織の様子に気付いた。

「沙織…?」

 そんな綾をよそに、沙織は目を閉じる。
 その瞬間、沙織の体全体から、物凄い力が放出された。

「沙織…っ!」

 眩しすぎて、思わず手をかざす。
 そのエネルギーは光になり、灯台を中心に弧を描きながらこの世界全体に広がっていく。

「綾…大好き…!」

 ひときわ大きな光が、辺りを包んだ。
 そして、沙織はその場に倒れる。

「おい…うそだろ、沙織!」

 綾は沙織の体を抱き起こした。
 目を閉じて、動かない沙織。

「…どうして…」

 綾は呆然と呟いた――。
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