Four Tethers〜絆〜
 戦いの後、沙織は持てる力の全部を使って壊れた街や支配された人々、空間のねじれを元通りに修復していた。
 そして、肉体が消された悠と諒にも、力を注いでいたのだ。
 そのおかげで、綾にとっては全く今まで通りの生活が戻ってくることになる。

「もう、おまえらうるさいからあっちに帰れ」

 しっしっ、とホウキで追い払うように綾が言う。

「俺達がいなくなると、寂しいんだろ」

 悠はそう言って新聞を読み始めた。
 その横でコーヒーを飲みながら、諒がボソッと呟く。

「あの時の綾、素直で可愛かったなぁ…」
「やめろ諒、その話はっ!」

 これは一生、ネタに使われるのではないかと思う綾。

☆☆☆

 沙織の傍に座り込み、その場を動けなかった。
 綾は呆然と、海の景色を眺めていた。
 すると、ふいに後ろに人の気配がする。

「………?」

 まさかと思って振り向いた。
 …そこには、悠と諒が立っていた。
 綾は、二人に抱きつく。涙がたくさん、溢れてくる。

「綾…」

 悠も諒も、綾の身体を抱き留めた。
 間違いなく、実体を持った二人が、今ここにいる。

「よかった…無事で…本当に…」
「沙織ちゃんの、おかげだよ…」

 悠が言った。

「完全に目覚めた力…何もかもをコントロールする強大な力で、この世界の何もかもを、もとに戻した」
「………」

 何も言えない。
 そんなに…自分を犠牲にしてまで、この世界を守りたかったのか。
 恐らくその為に、自分の能力の限界を越えた力を使ったに違いない。

「みんな終わった…家に帰ろう」

 諒が、動かない沙織を抱き起こした。

☆☆☆

「――忘れられないよ、あの戦いは…」

 綾は、窓の外を見つめた。
 悠と諒も黙っている。

「おっはよ〜♪ 今日もいい天気だね! 綾、もう掃除終わったの?」
「…なぁんで沙織まで同じセリフ言うかなぁ…」

 朝から元気な沙織に、微妙な表情を浮かべる綾。
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