Four Tethers〜絆〜
 さっき見たあれは“精神体”のようなものだと、悠は言った。
 それは人間という形にもなり、動物、気体、個体、植物などにもなる。
 精神体といっても、今、悠たちが戦おうとしている“連中”は、この世界に住む人間にとって時折、悪い影響を及ぼすものなのだ。
 その“気”の源となる【中心】を始末するのが、悠達の仕事…というか“使命”なのだそうだ。
 デパートで綾が言っていた言葉を、沙織は思い出す。

「そう…でもあの…光ってた…それに、何であんなに身軽に飛べるの…?」

 綾の方を見て、まだ信じられない光景を、沙織は思い出していた。
 諒と綾の跳躍力。
 それに、攻撃とも思える、綾の手の平から放たれたあの球体は、確かに光を放っていた。

「それはね、言うなれば俺達一族の専売特許みたいなものなんだ。俺達は、あれと戦うための能力を個々に持っている一族だからね」
「一族?」
「俺と諒は、従兄弟なんだよ」
「従兄弟…」
「ついでに言うと、ここを貸してくれている老婆は、俺達の実の祖母」

 ここでようやく、悠達とあの老婆との繋がりが分かった。
 でも、綾は?

「あたしは、こいつらとは全く関係ないからね〜」

 沙織の視線に気付いた綾は、何故かうんざりした顔でこう言った。
 悠達の家系は代々こういった稼業を受け継いでいた。
 その能力も同時に受け継がれたものなのだが、たまに同じような“能力”を持った人間がいるのだそうだ。
 綾も、その一人。

「ま、あたしは家族もいなくて天涯孤独だし、暇してるよりいいかな、と」

 あくまで楽天的な態度を崩さない綾。
 だが悠と諒は黙っていた。

「…あの、みんなの関係はなんとなく分かったわ…」

 本当は、理解しているかどうかも分からない。
 もうすでに頭がパンク寸前なのだ。
 もうこれ以上質問も出てこないし、何を説明されても頭に入らないような気がする。

「そうだよなぁ…疲れるだけよね、こんな話。あんまり考え込まない方がいいよ、沙織」

 苦笑しながら、綾が言った。
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