Four Tethers〜絆〜
 確かに理解は出来ないが、でも何か、今まで知らなかった事が少しだけ見えてきて、どこかほっとしている部分もあった。
 三人は、あの不気味な女と戦っている。
 それが、使命…?
 沙織は、ふとあることを思い出した。

「もしかして…綾、あなたがここに来た時も?」

 何故か、ギクッと身を強ばらせる綾。

「う…うん、まぁ」
「…?」

 その態度に、沙織は首をかしげた。
 そこへ、諒がニヤニヤしながら口を挟む。

「あの日はこてんぱんにやられたもんな、綾」
「だぁ〜っ! 言うんじゃねぇ!」

 綾は慌てて諒を羽交い締めにした。

「大体なぁ、あの日お前らがアイツをやっつけておかなかったから、今日沙織がこんなビックリする羽目になったんだろうが!」
「仕方ないよ、逃げたんだからね」

 コーヒーを味わいながら、悠はそう言い、三人の間でいつもの漫才のような押し問答が始まる。
 沙織は苦笑しながら、そんなやり取りを見つめていた。
 綾はあの日、さっきの相手に怪我を負わされていたのか。
 だけど、下手をすれば、致命的な大怪我になるかも知れない。
 それなのに、この三人は何故、こんな風に笑っていられるんだろう。
 沙織には、全く理解することが出来なかった。

「…ご飯まだだね。作ろうか」

 沙織はそう言って立ち上がった。
 もうすっかり辺りは暗くなっていた。
 それなのに、まだ何もご飯の支度をしていない。

「いや、沙織ちゃんも疲れただろうし、今夜は外食にしない?」

 悠はそう提案する。

「大賛成! 腹減ったぁ〜」

 綾が即座に立ち上がった。
 本当のことを言うと沙織もかなり疲れていたし、とてもこれから夕ご飯を作る気力は沸いては来なかった。
 まぁいいか、と沙織は出掛ける仕度を始める。
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