Four Tethers〜絆〜

ACT.5…『関 係』

 相変わらず暑い日が続いていた。
 夏休みも始まって海水浴を楽しむ人も増え、ここ喫茶店【FREE-TIME】も、一年で一番忙しい時期を迎えていた。
 最近は、料理が全くダメな綾も『かき氷係』と沙織に任命されてから、店先でかき氷を売るようになっていた。

「お姉さん、イチゴミルク一つ」

 女子高生が、水着姿のまま、かき氷を買いに来ていた。

「何だよ、お前また来たの?」

 夏休みが始まってからというもの、この女の子は毎日のように海に遊びに来ていて、その度にかき氷を買いに来てくれる。
 綾ともすっかり顔馴染みになっていた。
 名前は、美紀と言う。

「そんな毎日一人で海に来て、悪いヤツに引っ掛かるなよ?」

 ガーガーと氷を削りながら、綾はからかうように言った。

「大丈夫よ、こう見えてもあたし、強いんだよ?」

 そんな風に答えて、ガッツポーズを作ってみせる美紀。
 性格が綾に似ているせいか、来る度に楽しそうに話し込んでいる。

「そんなに暇があるんなら、宿題でもしてろよ」
「やだよ、綾さんに会いに来てるんだから♪」

 店の前に設置したパラソルの下に座り、美紀はかき氷が出来るのを待っていた。
 嬉しいこと言ってくれるじゃん、と綾は笑う。

「そっか〜、んじゃミルクたっぷり入れてやるよ」
「うわぁ、ありがとう!」

 きゃあきゃあ言いながら、また楽しそうなやり取りが始まる。

「案外、あぁいうのが性に合ってるのかもしれねぇな」

 そんな様子を店の中から見つめながら、食器を片付けていた諒がボソッと呟く。
 ようやく昼時の忙しい時間が終わり、一息つける時間になっていた。
 沙織のおいしい“裏メニュー”を食べる時間だ。

「諒、そろそろ綾呼んで来いよ」

 テーブルを拭きながら、悠が言った。
 りょーかい、と答えて諒は店先に顔を出す。

「…ゆーか、いねぇんだけど…」

 どういう訳か、店の外でかき氷を売っているはずの綾の姿が忽然と消えている。
 それを見て、沙織は首を傾げた。

「どこいったのかしら…」
「ま、放っておいて、先に昼ご飯食べてしまおう」

 いつものことだ、と大して気にもせず、悠と諒は沙織特製明太子スパゲッティの大盛りを食べ始めた。
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