Four Tethers〜絆〜
 どんなに心に傷を負っても、泣き言は言えない。
 …それは全て、自分の責任だから。

『自分を責める必要はない』

 諒は何度も綾に、そう言おうとした。
 だが、その言葉を綾に投げ掛けることはなかった。
 綾はいつも、自分を痛めつけるように戦っている。
 まるで、いつ死んでもいいとでもいうように。
 それはきっと、今でも自分を責めているからなのだということは、悠も諒も十分わかっていた。

『綾は家族を失った』

 能力を持っていながら、家族を守ることが出来なかったことを、綾はずっと後悔しているのだ。
 一生消えない心の傷…それは、他人が癒せるものではなく自分で治すもの。
 だが、いつも傍に居てやることは出来る。
 悠と諒はずっと、ただ、傍にいる。
 それは綾にもよく分かっている事だった。

「でもさぁ、沙織って…一体、何者?」

 気分を変えるように綾は言った。
 この1ヶ月の間、沙織と一緒に暮らしているが、彼女は能力者でもないのに普通の人間ともちょっと違う感じがしてならなかった。

「あの婆さんが見つけてきたんだ、何かあるだろ」

 諒は綾の感じていたことを、いとも簡単に肯定する。

「わざわざあの店、彼女の為に作ったんだからさ」

 だよねぇ…と、肩をすくめて、ふと、綾は立ち止まる。

「あいつと…友達に、なれるかな」

 諒も歩みを止めた。
 そして、振り返ると綾と目線を合わせるように至近距離でその顔を覗き込んで。

「もう、なってるだろ」

 笑顔を作り、そう言って諒はぽんぽん、と綾の頭の上に手を置いた。
 綾は少しだけ赤面して、笑顔を浮かべた。

☆☆☆

「ねえ、悠くん」

 綾の昼食を残して後片付けが終わり、沙織が口を開く。

「私、みんなが少し羨ましいよ」
「…どうして?」

 新聞を読んでいた悠は、顔を上げて聞き返す。
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