Four Tethers〜絆〜
「まだあたしにも教えられてないことたくさんあるから、知っていることだけ話すけど…度々あたし達を襲ってくる奴等と悠や諒は、あたし達人間から見れば“同じ存在”なんだ。…もうちょっと詳しく言うと、あたしらが住んでいる世界に重なっている別の世界の人間、かな?」
「別の世界の存在…?」

 前を見ながら、綾は頷く。

「そう。そいつらが、時折こっちに悪さしに来るんだ。悠達は、その悪さをさせないように、いつもこっちの世界にいて警戒してるし、もし何かあればその悪い奴等を懲らしめたりする訳」

 綾の話し方がシンプルすぎるのもたまには役に立つものだと、沙織は妙なところで感心した。
 おかげで少しは理解できる気がする。
 そんな思いを知ってか知らずか、綾は続けた。

「でね、あの【FREE-TIME】が建っている場所は、たまたまその二つの世界が重なる通路のような場所だった…多分、あの婆さんが見つけたんだろうけど。で、婆さんはあたし達の知らないうちに、そこに沙織を置いていた」

 …置くって…まぁいいけど。

「さっきのあれの言った言葉…“鍵”っていうのが、多分あんたの事だと思うよ、沙織。どういう仕掛けか、あんたがあそこに住んでいる為に、最近めっきり奴等が現れる回数が少なくなってきてるからな…その代わり、さっきの女みたいに、力の強いのには効かないみたいだけれどね」

 綾はそう言って苦笑した。
 沙織は、その言葉の意味を考えこんでいた。
 しばらく綾も黙って次の言葉を考えているようだった。

「…年に何回か、こっちの空間とあっちの空間ががすごく近づく日があるんだ。今日がその日」

 少しテンションを下げて、綾は言う。

「じゃあ、二人は自分の世界に…」
「あぁ、帰ったよ。たまに帰らないとパワーを補充出来ないんだってさ。あっちとこっちは時間の流れが違うらしいから、正直言って、今度いつこっちに来るか分からないけどね」

 綾はイライラと言った。
 それで、今朝あんなに嫌がっていたのかと、沙織は納得する。
 向こうの世界の連中がこっちで実体化するのは、かなりのパワーを消費する。
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