Four Tethers〜絆〜
 だけど、そうすれば何かが変わるかもしれない。
 漠然とした確信。
 今日は年に何回かの、二つの世界が近づく日。
 そして、鍵があったら、あれはこちらの世界に来にくくなる。
 鍵である沙織が二つの世界の境界である店【FREE-TIME】に帰ったら。
 あの女も自分の世界に帰らざるを得なくなるかも知れない。

「でも…悠と諒は今、あっちにいるんだ。ここで『鍵を閉める』みたいなことしたら…あいつらだってこっちに来れなくなるかも…」

 沙織の提案に、綾は珍しく少し不安そうに言った。

「しかも実体化するくらいの力を持った奴だ、本当にあっちに帰るかどうかもわからない…」

 そう言って、綾はふと、沙織を見つめた。
 真剣な表情。
 何故か分からないけど、確信を持っている。
 そうか…、と、綾は思い直す。
 力の差がこんなにも歴然としているのだから、今ここで、二人ともやられるよりは。

「やっぱ、やってみようか」

 少しでも、この状況を打開できる可能性があるのなら、試してみない手はない。
 頭で考えていても、何も変わらない。
 行動あるのみ、だ。

「うん、うまくいくかはわからないけど…」
「あたしが引きつける」

 少し目配せして、タイミングを見計らって沙織が走りだした。
 女は沙織の前に立ちはだかる。
 が、綾はその背後から女めがけて、飛び蹴りをくらわした。
 実体化した相手には、こういう攻撃手段も有効なようだ。

「行けっ!」

 綾の合図で、店に向かって全力疾走する沙織。
 女は迷わずに沙織を追い掛けようとする。
 だが一瞬早く綾が動き、その目の前に立ちふさがった。

「実体化してるから、物理攻撃通用するんじゃん」

 両手の関節をポキポキと鳴らし、ニヤリと笑う綾。
 女は相変わらず無表情のまま、綾を真っすぐに見据えた。

「相手はあたし。分かってんだろ、それくらい」

 綾は言いながら閃光を手から放つと同時に、女めがけて飛んだ。
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