Four Tethers〜絆〜
 女は片手で軽々と閃光を弾き飛ばし、さらに綾に衝撃波を飛ばす。
 綾は軽い身のこなしで横に飛びすさると、その体制のまま攻撃する。
 だが、それもまたかわされた。

「…チッ」

 舌打ち。
 今度は女が手をかざす。
 高く飛び上がり、綾もなんとかギリギリで相手の攻撃をかわした。
 だが着地点を狙われ、思わず体のバランスが崩れる。
 先ほど迄とは違い、容赦のない攻撃だった。
 ――これではまるで。

「…焦ってる?」

 立ち上がりながら、綾は擦り剥いた手の甲をペロリと舐めた。

『人間…の、くせに…邪魔、するな』

 女が言った。

「邪魔はおまえだろ!」

 言いながら、再度攻撃を繰り出そうとする。
 だが綾は、はっとして身構えた。
 今までと違う攻撃が来る。

「でかい…!」

 跳躍だけじゃかわせない。
 綾は両手で出来る限り頑丈な防御壁を作る。
 だが次の瞬間、綾は物凄い衝撃に弾き飛ばされ、展望台の壁にしたたかに体を打ちつける。
 身動きのできない綾を見下ろす位置に立ち、女は冷ややかな表情のまま、もう一回手を振り上げた。

☆☆☆

 沙織は店に向かって全力で走っていた。
 思い切り走れば、この距離なら五分で帰れるはず。
 ――だが。

(どうしたらいいんだろう?)

 安易に考えてしまっていたが、帰ってどうなるのか全く分からなかった。
 でも一刻も早く帰って、今の状況を何とかしないと。
 こんな時、悠や諒がいてくれたら。
 店が見えてきた。
 もう少し走れば。早く…早く!

「……!?」

 沙織は店の方を見た。
 また歪んで見えている。
 しかも店全体が、薄いもやのようなもので包まれていた。

「なんだろう…?」

 走りながらも、沙織は何か嫌な気配を感じていた。
 そして、その気配は…。

(…後ろ?)

 沙織は立ち止まって振り返る。
 そこには、あの女が立っていた。
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