Four Tethers〜絆〜
 事実、あの女の狙いは紛れもなく沙織だった。
 何も出来ない自分を守るために…綾は。

「…ううん、綾が頑張ってくれてた…大丈夫なのかな」

 沙織は心配そうに、展望台がある方向を見つめる。
「大丈夫だよ。怪我はしてるけど…生きてる」

 …生きてるって…悠に支えられて歩きながら、沙織は思う。
 …そう“気配”で居場所が分かると、悠は言っていた。
 もちろん今、綾がどこにいるのか、無事なのかどうかも。

「何でも知ってるんだ…」

 小声で呟く。
 聞こえているのかいないのか、悠は黙っていた。

「さ、着いたよ」

 二人は店に入った。

☆☆☆

 諒は気を失って倒れている綾に近づき、そっと抱き上げた。

「綾…」

 大丈夫か、という言葉が出てこないくらい、傷ついている。
 だが、抱き上げると綾はうっすらと目を開けた。

「…諒…?」

 少し驚いた表情を浮かべ、綾は安心したように、すぐに笑みを浮かべる。

「なんだよ…今回やけに早いじゃん、帰ってくるの」
「呼んだだろ、俺のこと」
「わけねェだろ」

 諒はそんな綾におかまいなしに、その身体を抱いたまま歩き出す。
 綾はいいから下ろせと暴れる。歩ける状態じゃないだろ、と諒。

「いいからじっとしてろ」

 その言葉に、綾は少し、大人しくなる。
 そら耳なのか、ごめんな、なんていう諒の言葉が聞こえたような気がした。
 綾は、無言で不思議そうに諒を見つめた。

「今回は俺達のミスだった。まさか、こんな事になるとは思ってなかった…」

 真剣な顔で、諒は言った。綾はくすっと笑う。

「大丈夫だよ。あたしも沙織も無事だったんだから。それに…たまに帰らないと…力が弱くなるんだからさ」

 諒は黙っていた。
 そして、綾は思い出したように辺りを見回す。

「あの女は? あたし…まるで適わなかった…」

 最後にあの大きな衝撃波をくらい、動けなくなった自分をあの女が見下ろしていた所までは覚えているのだが。
< 42 / 156 >

この作品をシェア

pagetop