Four Tethers〜絆〜

ACT.5…『信 頼』

 綾はあれから結局丸一日眠り続けて、内面的なダメージはほぼ回復したようだった。
 外傷は身体中のあちこちに残っていて、見るからに痛々しかったが。
 全く普段通りの日々がまた始まり、あんなことがあったのは気のせいだったのかと思わず考えてしまうほどだった。
 ただ、沙織はまだ心の中に引っ掛かる何かに苦しんでいるようだった。
 店は今日も忙しく、悠や諒目当ての若い女の子達で賑わっている。

「沙織さん、どっちと付き合ってるの〜?」

 そう言ってひやかす女子高生に、思わず苦笑い。
 そこへ、起きだした綾が店に入ってきた。

「沙織〜腹減ったぁ〜」
「起きてて大丈夫なの? 今なんか作って持っていくから、部屋で休んでて」

 綾の姿を見つけた、女子高生の美紀が駆け寄ってくる。

「綾さん、どうしたの、その怪我?」

 美紀は、包帯だらけ綾の怪我を見て驚いている。
 だが綾は、いたずらっぽくペロリと舌を出して言った。

「うん、ちょっと酔っ払って転んだんだよ」
「どんだけ転べばそこまで怪我するの〜? ドジなんだから、綾さん」

 美紀の容赦のない言葉に、綾は、ははは〜と笑って誤魔化した。
 店に来ていた他の女子高生達も、綾のことを心配して声を掛けてくれた。

「大丈夫だよ。また来てくれたんだ? ありがと♪」

 悠や諒とは違う意味の、綾のファンなのだろうか。
 女の子達は綾のおトボケぶりに爆笑して、こちらが圧倒されるようなテンションで綾と話し込んでいた。
 綾も楽しそうに彼女達と話をしている。
 それでも綾は少し、沙織の方が気になった。

「…おい、悠」

 丁度通りかかった悠のシャツの裾を引っ張って、綾が呼び止めた。

「何だよ綾、起きてて大丈夫なのか?」
「沙織に何か言った?」

 そのことか、と悠は頷いた。

「まぁ、本当のことを話したかな…いいタイミングだと思ったし」

 ふ〜ん、と綾は相槌を打つ。
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