Four Tethers〜絆〜
「まぁ、いつかは分かることだしね」

 そう言ってふと、自分が悠達のことを知らされた時のことを、思い出した。

「どうせあたしの時みたいに、包み隠さずそのまま正直に言ったんだろ」
「…ん? あぁ」
「ったく…」

 嘘も方便って言葉もあるんだよ、とかぶつぶつ言いながら、綾は頭をぽりぽり掻いた。
 そして、もう一回、沙織の方を見る。
 いつものように振る舞ってるように見えるが、ふとした時に見せる暗い顔が気になる。
 やっぱり元気づけてあげなきゃなぁ、と綾は思った。

「今夜、沙織と出かけようかな」
「いいけど…本調子じゃないんだから、あまり無茶はするなよ」
「分かってるって。おまえらもパワー充填できてないんだから、無茶すんなよな」

 今回の『帰郷』で補充するはずだった力が、時間がなくて出来なかったということだった。
 本調子じゃないというなら、悠達だって決して絶好調とは言えない筈だ。
 悠は笑って、分かったよ、と答えると仕事に戻る。
 沙織はサンドイッチを綾に手渡した。

「ちゃんと休んでないとダメよ、綾」
「もー大丈夫だって。中のダメージはウチの優秀な医者が癒してくれたし、見た目の傷はかすり傷だしね」

 綾は笑顔でそう言うと、サンドイッチをつまみながらリビングに戻って行った。

☆☆☆

 その夜、沙織はあまり気が進まなかったが綾にどうしても、と押し切られる形で街へ出た。
 そして、とあるビルの最上階にある夜景が見下ろせるカクテルバーに行く。

「こんな高級そうなお店、入ったことないよ…」

 と言う沙織を「あたしもだよ」といつもの調子で説き伏せ、綾は半ば強引に店に入っていった。
 週の半ばなので、店はそんなに賑わってはいなかった。
 だが、周りはやたらとカップルが多かった。

「あはは…なんか場違い?」

 何とも言えない雰囲気に、沙織は苦笑する。

「んなことないって」

 あきらかに場違いなのだが。
 綾はそんなことはまるで気にせずに、案内された一番奥にある窓際の席に座った。
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