Four Tethers〜絆〜
 適当にカクテルを頼み、窓の外に目をやると、小さな街とはいえ、高いところから見る夜景は、なかなかのものだった。

「きれい…久しぶりにこんなの見たよ」

 あたしもだよ、と綾は夜景を見下ろしながら言った。

「店を開いてから、こんな時間持てなかったから…。たまにはこういうのもいいわね」
「だろ? ほら、カクテルきた」

 透き通った青い色のカクテルで、二人は乾杯する。
 話しているうちに、何時間かがあっと言う間に過ぎていった。
 カクテルも何杯おかわりしたか分からないくらい、たくさん飲んだ。

「ねぇ、綾…?」
「何?」
「私…ほんとに“鍵”なの…?」

 不意に、沙織は真顔でこんなことを聞いてきた。
 綾は少し、黙り込む。

「沙織は沙織、だよ」

 何秒かの沈黙の後、綾は静かにこう言った。
 何だか今一番言って欲しいことを言われたみたいで、沙織は嬉しかった。

「綾は…どうだった?」
「あたし? …やっぱ、初めはボロボロだったかな…」

 苦笑する綾。

「でもね、あんまり深く考えないようにしてる。…考えたら、何も出来なくなるから」

 そう言って綾は少し、窓の外に目を移す。

☆☆☆

 …あたしもね、最初は憎んだよ。
 自分より、レベルが高いかなんだか知らないけど、そんな奴らに自分達が脅かされる…しかも、ただの“遊び”の為に。
 そのせいで…あたしの、家族が犠牲になったんだからね…。
 初めは、悠や諒もまるで信用出来なかった。
 奴らと同じ人種なわけだろ。
 あたしも利用されるのかって…最初は、二人を避けまくってたよ。
 そしてね、しまいには、誰も信じられなくなった。
 人を見ても、みんな操られてるように見えてしまうんだ。
 …あの時は本当に、一人だった。
 本当に一人になったことある?
 あれって…結構辛いんだ…朝起きてから、夜寝るまで誰とも会わないで…まるで引きこもりみたいになっちゃって…一日泣いて過ごしたりしてたからね…。
 でね、そんなあたしも、奴等の格好のおもちゃだった。
 狙われたあたしは、すっかり操られて…もう少しで、命を落とすところだった…。
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