Four Tethers〜絆〜
☆☆☆
「…それで、どうしたの?」
沙織が言った。
「しつこい奴等が、助けてくれた。…あたしのために戦ってくれたよ」
「……」
目を伏せて言う綾の横顔を、沙織は見つめた。
「人間の心を、思うように操れる…確かに、面白い遊びではあるよ。でもね、悠も諒も、そんなことはしない。絶対に嘘を言ったりはしない」
沙織は、黙って聞いていた。
「それがわかったから、あたしも信じることにしたんだ」
信じろ、なんて一言も言われてないけどね、と綾は心なしか照れ臭そうに言った。
沙織はカクテルグラスを揺らしながら考え込んでいる。
「…信じる、か…」
呟いてみる。
自分にも、出来るだろうか。
綾には多少なりとも能力がある。
でも、自分は…。
「私、何も出来ない…」
テーブルに突っ伏して、沙織は言った。
出来ることなら信じたい。
だけどこのままじゃ、悠や諒、綾にも迷惑をかけてしまう。
それが一番、辛かった。
「何かする必要はないよ」
カクテルを飲み干して、綾はきっぱりと言い切った。
ただ自分を信じること、自分以外の誰かを信じること、それだけだ、と綾は笑う。
「そうか…」
まだ分からない。
これからなのだから。
二人は、おかわりを頼んで乾杯しなおした。
その時、少し離れた席で、カップルが言い合いを始める。
「嫌だわ、他でやればいいのに」
沙織は顔をしかめる。
せっかくいい気分になりかけていたのに、台無しだ。
だがそのカップルの言い争いはだんだん激しくなり、店の人が仲裁に入っている。
「…要注意、だな」
心持ち目線を鋭くして、綾が言った。