Four Tethers〜絆〜
「でもなんか、物凄いこと平気で言ってない?」
「習うより慣れろ、だよ。理屈こねたってどうせ理解できないんだからさ」

 そう言って、綾は軽くウインクする。
 たまに、綾のその性格が心底羨ましい、と沙織は思う。

☆☆☆

 夕食が済んだ頃から、沙織は何か胸のあたりがちくちくと痛むような感覚に襲われていた。
 それを察知しているかのように、綾も悠も諒も、だんだん口数が少なくなっている。
 昼間はあんなにいい天気だったのに、今は風が強く、庭に立っている木がざわざわと葉っぱを揺らす。

「ね、ねぇ…何かなこの感覚…」

 不安になった沙織は、綾に言った。

「いつもの“お客さん”だよ」

 その表情は硬い。
 ――しばらくの沈黙。
 そして。
 おもむろに、綾が家の外に出た。
 悠と諒も、ゆっくりと立ち上がる。

「みんな?」

 沙織も立ち上がったが、婦人に止められた。

「あなたはここにいて?」

 変わらず優しい口調だが、否と言わせないような威圧があった。
 仕方なく沙織は座り、外を見る。
 ざわざわ、ざわざわと風が木々の間を通り抜ける音が、沙織を尚更不安にさせた。
 三人の姿はもう、見えなくなっていた。
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