Four Tethers〜絆〜
「まだ完全に、あなたの能力は覚醒してはいない。だから意識していなくても、こうなってしまう…例えあなたに、全くそのつもりがなくてもね」

 自分のせいで、またみんなを危険な目に合わせてしまったのか。
 自分がみんなを戦わせている。
 どうしてこんな…。
 あの三人を危険な目に遭わせる為にここに来たんじゃない。
 絶対に違う。
 沙織はそう反論しようとしたが、その言葉を発する前に、婦人は立ち上がるとゆっくりと沙織の隣に歩み寄る。

「あなたは、この場所がどういう場所なのか知ってるの?」

 その問いに、沙織は綾がお風呂で言っていたことを思い出した。

「…ここは、悠くんや諒くんにとって、鋭気を養える場所だって聞きました」

 その答えに、婦人はそうね、と頷く。

「そして、私にもここはとても居心地のいい空間なの。私達にとって居心地がいい場所とは、同時に敵にとってもパワーを養える場所でもあるのよ」

 沙織は、婦人のその言葉の真意を理解することが出来なかった。
 彼女は一体、何が言いたいのだろう。

「あなたのお店がある場所も、ここと同じようにいい“気”が出ている場所なの」

 窓の外を見つめたまま、婦人はそう言った。
 そう言えば、喫茶店【FREE-TIME】の場所も、ここと同じように“気”の溜まる場所だ。
 婦人はそれを知っていて、沙織を住まわせていたのだ。
 沙織はふと、この前悠達が帰っていた時のことを思い出す。
 あの時戦っていた敵は、沙織のことを“鍵”だと言っていた。
 婦人は“こちらが敵を誘い出した”と言う。

「…まさか…」

 そこから導き出される一つの可能性に辿り着き、沙織は思わず呟いた。
 婦人は、沙織の方を見る。

「何となく思い当たる事もあるようね…。あなたの“能力”は、こちら側とあちら側のゲートである空間をコントロールする力…」

 出来ることなら。
 この次に彼女の口から出てくる言葉は、聞きたくない。
 今すぐに、この場所から逃げ出したいと、沙織は思った。
< 62 / 156 >

この作品をシェア

pagetop