Four Tethers〜絆〜
 出来ることなら信じたいが…自分の力をコントロールすることすら出来ない。
 どうしたらいいか、全く分からなかった。

「あの子達も、きっとあなたの事を信じている。仲間として…友人として」
「信じられてる…?」

 婦人は頷いた。

「このまま敵を放っておいたら、この世界はいつか滅ぶわ。人間のマイナスの感情を糧にして、力が徐々に強くなっているの」

 もしかしたら、戦争まで引き起こすかもしれない、と婦人は付け加えた。
 まさか自分が、そんな大それたことに関係するなんて、思ってもみなかった。
 でも…。
 綾も悠も諒も、今も必死で戦っている。
 沙織のため、みんなのために。
 それはわかる。
 ――それは、理解できる。
 でも、何かが理解できていないのだ。
 いくら、頭の中で理解したところで、もっと違う心の奥深くで、何かが引っ掛かっている。

「…あなたの言うことには…納得出来ません」

 沙織は立ち上がった。
 婦人は悲しそうに俯く。

「…だから、自分の目で見て、自分の考えで判断したいと思います…私が何なのかを」

 沙織は玄関に向かうドアに手をかけた。

「…そして…私の友達の為に、行きます」

 振り返って少し笑う。
 婦人は、そんな沙織に笑顔を返した。
 この何カ月か、一緒に住んでみて、とても楽しいと感じる毎日だった。
 少しも嫌な思いはしない…お互いに、認め合っているから。
 この世界の人間がどうかなるなんて、大きすぎて自分にはわからない。
 でも、大事な友達のためなら、出来る限りのことをしようと思った。

 外に出たらすぐに、みんながどこにいるのか分かった。
 遊園地のある方向の空に、時折閃光が走っている。

「あそこね」

 沙織は走りだした。
< 64 / 156 >

この作品をシェア

pagetop