Four Tethers〜絆〜
「あんのアホ、もう少し戦法考えりゃいいのによ」

 立ち上がり、諒が呟く。

「悠ー! あいつ結界張ってる! なんとかしろよ、悠の管轄だろっ!」
「………」

 綾のアホさ加減に、内心頭を抱える悠。
 だが、女は動く様子を見せない。
 悠は考えを巡らせた。

(こっちが疲れるまで攻撃させるつもりなのか?)

 温泉で多少は鋭気を養ったが、まだ十分ではない。
 戦う力はそんなに残ってはいない。
 …どうする。

「早く決着をつけるしかねェだろ。こっちは悠長にしてられるほど、体力が残ってる訳じゃねェんだからな…」

 諒も同じ事を考えていたらしい。
 そして、右手を大きく振り上げる。
 次の瞬間、女めがけて閃光が走り、辺りを一瞬明るく照らす。
 だが、女はまたその場所にはいなく、閃光は観覧車の一部を破壊した。

「後ろだ、諒!」

 振り向きざまに諒は背中に息が詰まるような激痛を感じた。
 それでも悠が防御の為の結界を張ってくれていたらしく、まだなんとか立ち上がることが出来る。
 破れたTシャツから、血が薄く滲んでいた。

「このっ…!」

 綾が女に飛びかかった。
 だが、繰り出した拳は女に届く寸前でその力をなくし、まるで力が反発するかのように真正面から綾の身体を弾き飛ばす。
 桁違いの力だ。
 今度は女から動く。
 真っ直ぐに悠に向かって、拳を振り下ろした。

「……っ!」

 悠は両手を前に掲げダメージを軽減したのだが、それでも防ぎきれなかった。
 凄まじい重圧が、悠を襲う。
 悠ばかり狙うのは、最初に『癒やし』の力を奪う為なのか。
 それを見た諒は綾に言った。

「手伝え!」
「まかせろっ!」

 二人同時に動く。
 常人では考えられないスピード。
 精神的な力が及ばないのを分かって、今度は物理攻撃を仕掛ける。
 だが二人がかりなのに、その拳は女にかすりもしなかった。
 あざ笑うかのように軽々と攻撃をかわすと、観覧車の一番上に降り立つ。

「今日のあいつ、なんか人を見下してない? 態度だけじゃなくてさ」
「…だな」

 綾の言葉に、諒は腕組みをして答えた。
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