Four Tethers〜絆〜
 沙織の知っている陽子とは、まるで別人だった。
 顔色は青白く、やつれた感じがする。何か相当ひどい体験をしたかのように。

「どうしたの…まるで別人だよ…」

 見ているこっちまで悲しくなってくる。

「昔の綾みたいだな…」

 悠がそう呟いた。
 その時、ひときわ眩しい閃光が辺りを包む。

「…ちっ…」

 悠は舌打ちする。

「まさか、綾達…?」

 嫌な予感。

「…沙織…」

 陽子はこっちを見た。そして、手を伸ばす。

「沙織…私たち、友達、だよね…」

 沙織は思わず立ちすくんだ。
 陽子はすでに、尋常な顔つきをしてはいなかった。

「…あ…んなに、仲よかったでしょ…ね、一緒に…」
「陽子、何があったの? そんなになるまで…!」

 沙織は一歩、陽子に近づく。
 その時、悠は暗闇に目を凝らした。
 敵が、来る…!
 諒と綾は。まさか、さっきの激しい閃光で…。

「…友達、だ、よ…ね…」

 スパークする結界が、今にも爆発しそうな勢いで大きくなる。

『…鍵、か…』

 声がする。
 振り返ると女が宙に浮かんだまま、こっちを見ていた。
 その途端、沙織は全身が震える程の怒りに襲われた。

「あなた…許さない」

 女を睨み付ける。
 そんなことにはまるで無関心というように、女は悠に攻撃を仕掛けた。

「悠くん!」

 防御でなんとかしのいだが、ダメージもある程度受けたらしく、悠はその場に膝をついた。
 一方、陽子は今にも飛び降りそうに、足をレールの外に踏み出そうとしていた。

「た、た…す」

 助けて、と。
 一瞬、聞こえたような気がした。
 …そして、次の瞬間、陽子は飛び降りる…!

「陽子!」

 考えるよりも早く、沙織は陽子に飛び着いた。
 地上30メートルのジェットコースターのレールから、二人一緒になって落ちていく。

「沙織ちゃん!」

 次の瞬間、悠も下へ飛び降りた。
 その刹那。
 青い光が、一瞬だけ辺りを照らした。
 その瞬間だけ、真夜中の遊園地は真昼のような明るさになる。

☆☆☆

「……?」

 気が付くと、沙織は地面に座り込んでいた。
< 71 / 156 >

この作品をシェア

pagetop