Four Tethers〜絆〜
 沙織の能力は、まるで悠達を戦わせる為だけにあるようなものだ。
 毎回、あんなに傷ついて…ボロボロになりながら、いつ消滅するかわからない、危険な戦いに…。
 そんな沙織の気持ちを見透かすかのように、悠は言った。

「誰のせいでもないんだよ」
「…違う!」

 沙織は、激しく首を横に振った。

「悠くん達は、戦いたい訳じゃないんでしょ? なのに私、こんな場所へ連れてきて…まるで皆を戦わせる為に…!」
「…そうじゃない」
「こんな力なんていらない! 私はただ…みんなと一緒にいたかっただけよ。だけど…」

 沙織は俯いた。
 その目から、涙がこぼれる。

「私なんて、いなければよかった…!」
「そうじゃないんだよ、沙織ちゃん」

 ふと、沙織は顔を上げた。
 目の前に、悠の肩が見えた。
 抱きすくめられたと理解したのは、耳元で悠の声を聞いた時だった。

「俺達は、沙織ちゃんと出会えて、本当に良かったと思ってる。綾だってきっと同じだよ。沙織ちゃんが能力者じゃなくても、同じようにいい関係を築けたと思っている」
「悠くん…」
「婆さんが言っていただろ、意味のないことなんてないって。俺達が沙織ちゃんと出会ったのも、たまたま沙織ちゃんに能力があったことも、きっと何かの意味があるんだよ。だからそうやって、自分を責めたらいけない」
「………」

 沙織は何も言えなかった。

「俺も諒も、綾も戦う。だけど、それを誰かのせいにしたりはしない。ましてや、沙織ちゃんのせいだなんてこれぽっちも思っていないんだ。だから…」

 悠は沙織から少し離れて、真正面からその顔を見た。

「だから、信じてほしい。そして、俺達も、沙織ちゃんのことを信じてるから」

 悠の言葉は、沙織の胸に深く染み込んで行った。

☆☆☆

 その頃、綾は缶ビール片手に屋根の上に上がって、さっきまでの嵐が嘘のように晴れわたった夜空を見ていた。
 何故かいつも、戦いが終わった後は一人になりたくなる。
 こんなことがいつまで続くのか。
 誰だって人間は、心の中に闇の部分を抱えている。
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