Four Tethers〜絆〜
「決めた。あたし、目的を持つことにした」
「なんだよ?」
「…まだ言わない」

 綾はそう言って笑う。
 あぁそうかよ、と諒は呟いた。

「とりあえずは今はしのいだけれど、どうせまた新しい敵が来るだろうし…」

 綾は、真っすぐに諒を見る。

「あたし、もっと強くなりたい」

 諒は黙っていた。

「今回あたし、まるで役に立たなかったもんね。なんとかしてもっと、戦力になれるように頑張らないと」
「なんでそこまでやらなきゃならないんだ?」

 諒が言った。
 綾は少し考えて、口を開く。

「…なんでかなぁ…最近なんだか、戦ってないと生きてる意味がないんじゃないかって…不安になるんだ」
「俺は、最近そうは思わなくなったよ」

 諒の言葉に、綾は目をまるくした。

「こっちの世界で生活するようになって、いろんな楽しいことがあるのに気付いたから」

 久しぶりに、諒の素直な笑顔を見たような気がする。
 綾はそう思った。

「いいことじゃん」

 つられて、綾も笑う。

☆☆☆

 そして、次の日。
 陽子は夕べのことを全く覚えていないようだった。
 綾達はそ知らぬ顔をして、朝食を食べている。

「じゃあ、行こうか」

 沙織はそう言って、陽子と一緒に車に乗った。
 二人をリビングから見送って、綾はテラスに座る。

「う〜ん、今日もいい天気」

 大きく伸びをしながら、今日は何をしようか考えを巡らせる。
 とりあえず沙織がここに戻ってくるまで、時間はたっぷりあるのだ。
 悠と諒は何をするでもなく庭でくつろいでいた。

「なんだよ二人とも…ジジくさいよ、そんなところで」

 綾が茶々をいれる。
 だが、中川美恵子に止められた。

「少し疲れているの、そっとしておいてあげて」
「…へいへい」

 うんざりした顔で、綾は言った。
 見ると、二人はすやすや眠っているようだった。
 その寝顔を見て、綾は微笑む。

「…ま、たまにはゆっくり休ませてあげようか」

 小さな声で、綾は呟いた。
 やけにゆっくりと時間が流れていた。
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