Four Tethers〜絆〜
『ある一日…綾』
「おまえはいいよなぁ、好きなことしてても誰も文句言われないからなぁ」

 お店の休憩時間、綾は白猫の太郎に話しかけていた。
 諒が拾ってきてからまだ何日も経っていないのに、猫というのは本当にマイペースで、我が物顔で昼間からリビングで昼寝をしている。
 今日はお店も暇なので、もともと皿洗いくらいしかしてない綾は、かなり退屈していた。
 何が辛いかというと、じっとしていることが一番辛い。
 何かやることはないかと考えを巡らせる。
 だが、これといってやることがない。
 沙織はもちろん料理を作るし、最近は悠はすっかり、コーヒーを湧かすのをまかされている。(これがなかなかおいしい)
 諒はウエイター。
 綾もやろうとしたのだが、どうも料理の扱いが雑でみんなに却下された。
 かくして、綾に出来ることといえば、皿洗いのみ。

「綾。休憩、交代だ」

 諒が部屋に入ってきた。
 休憩は、順番に休むことになっている。

「だぁって暇なんだろ? いいじゃん、もう少しくらい」
「沙織は休憩なしで頑張ってるだろ」

 ワガママ言ってないで早く行け、と諒はソファに座りながら言った。

「あいつがいないと料理作れないじゃん」

 そう言ってから、綾はあることを思いついた。

「あたしも料理に挑戦しよつかな」
「えっ…」
「何だよ、その嫌そうな顔は」

 あからさまに意外そうな顔をされて、綾はむっとする。

「…いや、別に」
「ふん」

 綾は店に向かった。
 その後ろでくわばらくわばら、と諒が呟く。

「ねえ、あたしにも料理作らせて」
『えっ』

 店に出て開口一番こんなことを言い出した綾に、沙織と悠はキョトンとして聞き返す。

「何で二人して諒と同じ反応するんだよ」
「おっお前、何でいきなり」

 明らかにたじろいでいる悠が言った。

「だって暇なんだもん」

 当然の如く言い切る綾に、沙織が慌ててフォローに入る。
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