Four Tethers〜絆〜
「いっ…いいじゃない、いいことよ、うん。綾が料理に興味を持つなんて…」
「顔引きつってるよ、沙織」
「えっ…」

 綾の鋭いツッコミに、沙織は両手で自分の顔を押さえた。

「とにかく、あたしが【Free-time】の新メニューを作る!」

 冷蔵庫から適当に材料を出しながら、綾が言った。
 こうなったら誰にも止められないと諦め、沙織も悠も綾の動向を黙って見守ることにする。

「やっぱ、新メニューはスペシャルパフェにしよう」

 綾は言った。
 何でもスペシャルを付ければいいものではないのだが、と沙織は苦笑する。
 パフェ類なら、一通りメニューに揃えてあるのだから。
 そんな沙織の思惑をよそに、綾は楽しそうに包丁を取り出した。
 まず、フルーツを切る。
 やっぱ可愛くないとなぁ、と切り方にもこだわってみる。
 そして、生クリームはたっぷりがいいよね、とかなんとか呟きながら、約一時間が経過した。

「…出来た♪」

 その時ちょうど運悪く、諒も休憩を終えて店に出て来る。

「…何だこれ」

 パフェを見るなり、諒が呟く。

「綾の新作よ…」

 沙織が説明する。
 パフェの器にフルーツや生クリームが乗っているので、かろうじて食べ物であることは分かる。
 だが、どう見ても食欲をそそられるようなものでは…。

(どうするんだこれ?)←諒
(目の前に出されたってことは、やっぱ食べろってことなんだろ…?)←悠
(みんな落ち着いて。材料はフルーツと業務用の生クリームよ。誰が作っても味は変わらないわ)←沙織


 店の隅に三人で集まり、何やらこそこそ話し合っている。

「何やってんだよ。ちゃんと試食してよ、綾さんご自慢のスペシャルパフェ」

 満足そうな笑顔で“それ”を勧める綾。
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